暗くて広い闇の中

 

冷たい足音がコツコツと響き渡る

 

 

ここはどこ?

 

なんで私、こんなところにいるの?

 

 

手には技を使えなくする特殊なリング

 

そして鉄球付きの足枷

 

 

 

目を覚ますと、何故か私はそんな状態だった

 

 

 

 

 

太陽の物語

 

 

 

 

 

 「あら?お目覚めのようねぇ、アリスちゃん…?」

 

 何これ!?いきなり何なのよ!?

 身動きできないようにされた上、鎖で椅子に縛り付けられてる!?

 そして目の前にはアーボック人型の女の人…

 

 

 「ちょっと何コレ!?一体なんの番組よ!?てゆうかここはどこなの!?

  確か私はさっきまで事務所の控え室にいて…突然眠気に襲われて…」

 

 

 そう、私はさっきまで事務所の控え室にいたはず…。

 …確かいきなりすごい眠気に襲われて、そのまま寝ちゃって…目が覚めるとここに…

 も、もしかして私…夢遊病とかっ!?

 

 いやいや、そんなわけないわよね…

 えーっと、この状況で考えられることは…

 

 1、これは夢でした☆

 2、ドッキリでした☆

 3、誘拐事件でした☆

 

 いやっ!!自分で考えておいてあれだけど三番だけは絶対に嫌っ!!!

 でも三番なわけはないわよね…だってあんなセキュリティーバッチリなところで誘拐事件なんか起こるわけが…

 

 

 「わかったわ!これはきっと夢ね!!悪い夢だったのよ!!!」

 

 「じゃあ試してみましょうか…?」

 

 そう言うと、アーボックの女の人は尖った牙のような凶器を私に向けた…

 

 「え…ちょっ…!そんな危ないものはしまいましょう!?」

 

 「夢だったら…きっと痛くないわよぉ…?」

 

 「キャアッ!!」

 

 

 その凶器で私の足を切りつけた…!!

 切り裂かれた足からは血が…流れて…

 

 

 「いやああぁぁああああ!!!!」

 

 「痛い?ウフフ…じゃあ残念でしたぁ…これは悪夢なんかじゃなかったわねぇ…」

 

 

 た…助けて…!!この人尋常じゃないよ…!!

 このままだと…私…絶対殺されるっ…

 

 

 「ヤダッ!!誰か助けて!誰かっ…誰かぁ…!!!」

 

 

 「いいわぁ…その絶望に満ちた目…無力を悔いる叫び……わたくし、そういうの大好きでしてよ…?」

 

 

 「なんでこんなことするのよぉ…!?お金が欲しいなら事務所に連絡しなさいっ!

  私を誘拐したって…!!そうすればいくらでもお金なんかあげるんだから…!!」

 

 「ごめんなさいねぇ、わたくし達はそんなお金なんていらないわぁ…

  あなたを誘拐したのは、もっと別の目的…」

 

 「別の…?」

 

 「そう…あなたはいわゆるエサなのよ…」

 

 

 クスクスと笑う女の人のもとに一匹のアーボ原型が巻きついてきた…

 その光景はすごく不気味なもので、恐怖が余計に増してしまう…

 

 

 「あらぁ…いい子ねぇ、ふぅん…あいつらが来たの…?そぉ、ご苦労様…

え…?色違いのニューラがいた…?それは…まさかあのニューラかしら…。

そうだとしたらアスタリスク様にもご連絡をしなくちゃね…。

  じゃあ早速そのお客様達をお出迎えに向かわせようかしら…」

 

 

 「私をエサにしておびき寄せた人…?」

 

 「そぉよ…、あなたを助けに来た王子様ってところかしらねぇ…」

 

 「あなたの目的は何っ!?その人達をどうしたいのよ!!」

 

 「ウフフ…いいわ、どうせあなた死んじゃうし、教えてあげる…。

  あなたを助けに来た勇敢な騎士達はね、グロリア軍の虫けら共よ…」

 

 

 グロリア軍…聞いたことがある…。

 大体が人型の種族で構成されてるっていう救助団体…

 人間とポケモンの共存を目指して活動していて、テロリストとかと戦ってる…

 

 

 「まさか…あなたテロリスト…!?」

 

 「人聞きが悪いわぁ、テロリストだなんて…。わたくし達は分からずやのグロリア軍の奴らに

  本当に正しいことを教えている、本当の正義…クレド軍ですわ」

 

 

クレド軍って…ポケモンだけの理想郷を作るとか言って人間や、人間に肩入れする者達を

排除しようとしてる…あのクレド軍…!?

確か…色々なテロをあちこちで起こしていて、他者の命なんか全然なんとも思ってないっていう

凶悪な奴らで…係わったら命の保障はないって話が有名な…

 

 

 「グロリア軍は全然分かっていませんわ…本当に正しい世界の在り方というものを…

  この世界は人間によって汚されて、人間によって多くの犠牲が出ている…

  所詮人間とポケモンが共存するなんて無理なこと…とても愚かな考えですわ」

 

 そう言うと、巻きついているアーボの頭を撫でた。

 …よく見るとこのアーボ、左目に大きな傷がある…

 

 「見て…可哀相な子でしょう……この目の傷は人間によってつけられたものなの…

  そのせいでこの子は左目が見えないのよ…?この子の光は…人間によって奪われた…。

  これがこの世界の真実…グロリア軍はあんな野蛮で汚い生き物と共存しようなんて言ってるのよぉ?」

 

 「で…でも…人間だってそんな人ばかりじゃないわ…!」

 

 「けど、この子を傷つけたのは人間。その事実は変わらない…」

 

 

 アーボックの女の人は無線を取り出し、何か連絡をし始めた。

 

 「北の森入り口付近にグロリアの奴らがいるわ…別にそこで皆殺しにしちゃってもいいんだけど…

  その中に例のニューラかもしれない奴がいるから生け捕りにしてきなさい…

  他の奴…?そうねぇ…この子のエサにするから生きたままの新鮮な状態で…そう、よろしくねぇ…」

 

 「あ、あなたは行かないの…?」

 

 「北の森は寒いところよぉ…わたくし、寒いのは好きじゃありませんの…。

  それに、どうせここに来るあの小隊はランク間違えのザコだから、わざわざわたくしが手を下さなくても…」

 

 「ランク間違え…?そんなっ!だってこれは誘拐事件だから強い人達が来るはずじゃ…!?」

 

 「あなたは誘拐されたことになってませんの。だって、あなたが自らここに来たんですもの…」

 

 「…っ!?私が…自分でここに…!?」

 

 「正しく言うなら、あなたの身体が自らここに来た…ということかしら…?」

 

 「それはどういう意味…!?」

 

 「こういう意味ですわ」

 

 

 アーボックの女の人がパチンと指を鳴らすと、空中に五体ほどの原型ゴース達が現れた…

 もう私の恐怖は絶頂を超え、さっきから涙がずっと止まらない…

 

 

 「あなたが事務所とやらで急に眠くなったのは催眠術。その後、眠っているあなたの身体に

このゴースが憑依して、そのまま外へ出たわ…そうすれば誰も怪しまない…

そして街中では回りに四体のゴースをつけて憑依されてるあなたごと姿を消して移動した…

だから誰もあなたを見てないし、目撃情報なんてものは届かない…だから優しいわたくし達が

偽造した…いえ、ある意味では本当の目撃情報をグロリア軍に送ってやったわ…事務所のふりをしてね…」

 

 

 「でも…!事務所の方だって私がいなくなったらおかしいと思うでしょ!?」

 

 「実はね、あなたの捜索依頼を出したのは事務所じゃなくてわたくし達なのですわ」

 

 「えっ…!?」

 

 

 「あなたの事務所はクレド軍が占拠しましたの、事務所内の方々はみぃんな何日もお眠り中ですのよ?

  そして、わたくし達はグロリア軍にこういう話で依頼を出したの…『アリスは仕事をサボるために

度々事務所から逃げ出すことがある。だから今回も仕事をサボるために脱走したと思われる。

怪しい目撃情報もないし、不審者の連絡もない。ただ、一件だけある目撃情報には、アリス一人で

北の森にいたという情報が送られた、写真を見る限りでは不審者もいないし、アリス自らがここに

逃げてきたということで、今回の依頼はマスコミに騒がれると大変なのであまりランクの高くない

捜索依頼を頼みたい』ってね…」

 

 

 そんなウソばかりの話…!

 私は一回も仕事をサボったことなんかないし、事務所から逃げ出したなんてこともない…!!

 

 

 「そういうわけで、ランクC〜Dくらいの弱い小隊しか来ないわ…」

 

 「そ…そんなの卑怯よっ!!弱い隊を呼び出して倒すなんて…!」

 

 「わたくしは無駄な労力を使いたくありませんの…だから同じ数を仕留めるなら強い隊より弱い隊のが

  どう考えても楽で、効率も良くて、それにとっても確実な方法じゃなぁい…?」

 

 「あなた達…本当に最低なやり方しかできないのね…!」

 

 「ありがとう…でもこれは悪魔でもわたくしの考えで、中にはわざわざ大きな事件を起こして

  強い隊を誘い出し、正々堂々戦って潰す…なんて方もおられましてよ?

  わたくしはそんな野蛮で疲れることが嫌だから、こうして念密に計画して確実な方法で潰すのですわ」

 

 

 そして獲物を待つ蛇のようにニヤリと笑って、アーボの頭を撫でる…

 その周りには不気味なゴースが蠢いて……

 

 まるでその姿自体が恐ろしい『死』を暗示しているようで、私の身体からは大量の汗と涙が溢れ出てくる。

 そして切りつけられた足の傷からも大量ではないが血が流れている…

 『死』というものを間近にするとこんなにも恐怖という感情が浮き彫りになるの…!?

 

 視界が、流れている血のように真っ赤になる…

 

 

 「ちょっ…!何をっ…んっ…!!」

 

 「お喋りは終わり…これからわたくしは予想もしなかった特別なお客様を迎える準備をしなければならないの…」

 

 

 口に布を巻かれた…これでは助けを呼ぶことも、叫ぶこともできない…

 

 完全に身動きができなくなった身体から、『逃げられない』という恐怖が溢れる…

 

 

 「んっんんっ…!!!」

 

 「あなたも…後でちゃんとこの子のエサにしてあげるから…

  それまではたっぷりと迫り来る死への恐怖を感じ…絶望の味に満たされるのよ…?」

 

 

 もう一度、あの不気味な微笑をすると、彼女はこの場から去っていった…

 

 私は一人、身動きすることも、叫ぶこともできず、この広くて冷たい闇の中で絶望に堕ちていった

 

 

 

 

 私の夢の王子様…どうか私を助けてください…

 

 

 

 

 ただ、何の光もない希望に祈りを捧げることしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

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