朽ち果てて 堕ちていく

 

汚されて 汚されて

 

 

そんな世界の姿を

 

 

美しいと思うのは 何故

 

 

 

 

 

太陽の物語

 

 

 

 

 「到着です」

 

 

 ノヴァの声に、S隊は目を開いた。

 

 

 

 「ここは……?」

 

 

 

 目の前に広がるのは無惨な世界の姿。

 

 崩れ落ちた廃墟、枯れ果てた木々、有毒ガスにより赤黒く変色した不気味な空。

 

 

 

 「ここは、私達の生まれた場所ですよ。今やただの廃墟ですけど」

 

 

 「…生物兵器を造っていた研究所ってことか?」

 

 

 「そう、かつては大きな研究所がありました。しかし、11年前の爆発事故で跡形もなく

  この世から姿を消した。その跡地です」

 

 

 

 その光景は世界の終末としか言い表せない程の悲惨なもの。

 生きている気配を全く感じさせない、絶望と死だけが支配する空間…

 

 

 

 「人間は愚かにも神の領域にまで手を伸ばして、生物兵器というものを造りだした。

  それぞれの欲望のままに…。科学者は自分達の知能を証明するために、

  国家は金や権力を得るために。しかし、自分達の造った“罪”により“罰”を与えられた。

  その結果がご覧の通り、残ったのは無惨な世界の姿のみ…」

 

 

 

 

 廃墟を背にするノヴァの存在は、まるで本当に人間達の“罪”のようだった。

 

 

 

 

 「いずれはもっと大きな“罪”が世界全てをこのような姿にすることでしょう。

  この廃墟は未来の世界そのものです」

 

 

 

 「もっと大きな…罪…?」

 

 

 

 

 絶望を奏でる乾ききった風の音に、真紅の布を翻らせ 静かに微笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それは、貴方達“人型”の存在全てです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声は鋭い刃物のようで、鉛のように重く、その場に居た者全員を

 縛り付けるような恐ろしい力を感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 「人間が造りだした“罪”は私達だけではありません。

それは貴方達、人型も私達と同じように人間の手で造られた存在なのですから」

 

 

 

 

 

 「おい…それってどういうことだよ…!?」

 

 

 

 「ご存知ありませんか?何故、人間と原型の血が混じった新しい生物“人型”が

  この世に生まれたのか…。人型という種族はもともとこの世界に存在しなかった。

  存在しなかったものが今、存在しているということは…誰かがそれを造ったということです」

 

 

 

 「聞いたことはあるわ。古代文明の話だからそれを立証できるものは伝記のみで

  実際の技術等は見つかっていないから今の時点では“仮説”とされているもの…」

 

 

 「李苡、お前そんなことまで知ってんのか!?」

 

 

 「まぁ趣味程度に調べただけよ。その書物に残されていた記録だと、ずっと昔には

  人間と原型モンスターが“けっこん”していた時代があるらしいの。

  おそらく、そこに記されていた“けっこん”というものは現代のような結婚の意味ではなく

  他に何かしらの違う意味があったのではないかっていう説もあるだけど

  今のところ何も解明されてないわ」

 

 

 「それで、人型はどうしてこの世界に…?」

 

 

 

 「考えられる説としては、人間が特殊な科学的技術で原型との血を混ぜて異種族間交配を行い、

人間と原型の特性を持ち合わせる新しい生き物“人型”が生まれたと言われてるわ

古代文明は今の科学技術より遥かに進歩していたらしく現代では不可能なことも可能だったみたい。

その人間と原型の血を混ぜて人型を生み出す技術のことを“けっこん”と言っていたのかも

しれないって仮説が今では一番有力とされているわ。その技術は現代では失われてしまったけど…」

 

 

 

 

 李苡は分かりやすく説明したつもりだが、

ウィルとルナはいまい理解ができなかったみたいだ…

 

 

 「そうです。貴女の言う通りですよ。

  人型という種族は古代文明が造りだした人工的生物。

その後は自然繁殖して、現在のように人間と並ぶまでの生き物となりましたが」

 

 

 「でもあれはあくまで仮説よ。実際には何の証拠も発見されてないわ」

 

 

 「証拠ならあります。どんなものよりも信頼性のある、絶対的証拠が…」

 

 

 

 

 そう言うとノヴァは異空間からあるものを出現させた。

 

 それは不思議な輝きと底知れぬ力を感じさせる16枚のプレート…

 

 

 

 

 「これは、神が世界を創った時に残したとされるプレートです。

  あらゆる力の源とされ、そして世界の全てを記憶し伝える伝道師…。

  私の左目は物や人から過去を読み取ることができます。

  このプレートはまさに世界の全てを記憶している、絶対の記録装置。

  私は全ての記録を見てきました。世界の始まり、古代文明の繁栄と衰退…」

 

 

 

 

 ノヴァは宙に浮くプレートに手を伸ばした。

 すると、プレートは眩い光を発して不思議な色で輝いた。

 

 

 

 「間違いなく、人型は古代文明の技術により人工的に造られた生物です。

  それはこの記憶が証明しています。そして、その禁じられた技術に手を出したことにより

古代文明は神の裁きを受けることとなります。裁きにより古代文明は全て滅び、

その技術等も失われ、生物はまた一から文明を築き上げた結果、現代に至ります」

 

 

 

 伸ばした手を戻すと、プレートも元の色に戻った。

 

 

 「プレートから読み取った記憶です。一度世界は神の審判にかけられ、裁きを受けた。

  それから長い月日が経ち、世界はまた同じ過ちを繰り返そうとしている。

  そう、今が審判の時。世界は狂っているのです。自然の摂理では生まれるはずの無かった

  人型が存在してる時点で、人間…いや、生物は神に逆らっているということ」

 

 

 

 「よく分かんねぇけど、人型は大昔に人間が造りだした生き物ってことだろ?

  それの何が悪いだ?みんな普通に生活して、笑ったり泣いたりして…

  誰が造ったとか自然の摂理がどうだとかそんなものは関係なく、みんな生きてるんだよ

  それで充分じゃねーの?生物兵器だってそうだよ、生き物として生きてるんだから

  もう罪とか罰とかどうでもいいじゃ!みんな同じ生き物なんだよ!!」

 

 

 

 ウィルがそう言うと李苡が小声で「よく言った!」と笑いながら背中を軽く叩いた。

 

 

 

 「私には見えます。世界の行く末が…。

  それはまるでこの廃墟のような世界。神の裁きを受けずとも、いずれは人間が造りだした

  “罪”の存在である人型に、“罰”として己が滅ぼされることでしょう。

  そして人型も原型も、全ては世界と共に朽ち果てていく…

  貴方は、そんな未来を守りたいと思うのですか?」

 

 

 

 「さっきも言っただろ!俺は、お前が見てるその未来を変えてやるって!!

  可能性まで0にしちまったらもったいねぇじゃん!

  だから、俺は未来を守りたい!そして絶対にこんな姿にはさせない!!」

 

 

 

 

 その答えに、ノヴァの微笑は消えた。

 

 

 

 

 「愚かな考えは変わらないのですか。分かりました、仲間になることは強制しません。

  しかし、私達は審判者。神の裁きをただ見守るだけの者…

  その裁きの邪魔をしようというのなら、私達はそれを排除しなければなりません」

 

 

 

 

 すると、いきなり先程までとは比べ物にならないような力が空間を覆った。

 誰も身動きすら取れなくなり、本物の“死”を思わせるような恐怖に包まれる。

 

 

 しかし、誰一人として十字軍から目を背ける者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 「さぁ、リクヤとメルトも退屈していたことでしょう。

  私も喋りすぎて少々疲れました。なので、審判を手伝ってもらいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノヴァがそう言うと、S隊は眩しい光の中に吸い込まれていった。

 深い場所に堕ちていくような感覚と、頭が割れそうな程のノイズだけが ただ ―――――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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