俺はもう迷わない
誰が何と言おうとも
信じた道を ただ突き進む
月と太陽の物語
李苡のおかげで目が覚めた俺は、まず夢幻達に謝ってきた。
余計な心配させちまって悪かったな。
相変わらず涙もろい夢幻はすぐに涙目になっちまった。
とりあえず俺はもう大丈夫だからとだけ伝えて、今日十字軍に返事をすることは言わずにいた。
そんなこと言ったら多分あいつらは一緒に行くとか言い出しそうだしな…
もう誰にも迷惑はかけたくない。もしかしたら、十字軍との戦闘だって考えられる。
A隊ですら歯が立たないような連中に、俺達が到底敵うとも思えない。
最悪の場合、生きて帰ってこれるかどうかも…
だからこそ、これは俺が一人で片付けなくちゃいけない問題だ。
「…久しぶり、先生」
もうすぐ十字軍との約束の時間。
俺は出発する前に先生がいる病室へと足を運んだ。
実際はそんなに久しぶりでもないが、色んなことがありすぎて時間の感覚が
おかしくなっているようだった。
先生は未だに眠ったまま、部屋にはピッピッピと先生の鼓動を伝える
機械の音だけが静かに響いている…
「なぁ先生…俺、決めたよ。俺が歩いていくべき道。
今から十字軍に会ってちゃんと伝えてくる。俺の、本当の気持ちを」
俺は眠ったままの先生に、いつもの顔で笑ってみせた。
泣いた後だから上手く笑えてるかは微妙だけど…
「…先生、こんな俺を育ててくれて本当にありがとう……行ってきます」
そう言って、部屋を後にしようとしたら…
意識が無いはずの先生の目から一粒の涙が頬を伝って流れ落ちた。
「大丈夫、絶対に帰ってくっから」
そしてもう一度、笑ってみせてから俺は部屋を後にした。
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―――――――――――…
「よぉ、待たせたな」
十字軍との約束の場所、姿は見えないがどこかにはいるはずだ。
「答えは出ましたか?」
どこからか感情の無い声が響くと、時空の歪みの中から奴らは姿を現した。
「単刀直入に言う。俺はあんたらの仲間にはならない」
「なんやとっ!?」
「待ちなさい、リクヤ」
俺の返答に怒りをあらわにするリクヤをノヴァは冷静に静止し、
表情一つ変えずに訊ねてきた。
「理由を、聞きましょう」
その声は怒っているわけでもなく、驚いているわけでもなく
いつもとなんら変わりのない静かで冷たい声だった。
まるで、こうなることが分かっていたかのように…
「俺は、人間も人型も原型も、みんなが仲良くできる世界を作りたい!
あんたらみたいに全部を壊すのも違う、クレド軍のように片方だけを消すのも違う…
俺は…全部を守りたい!!これが俺の信じてる、俺の進むべき道だ!!」
「アホちゃうか?そんなんただの綺麗ごとやん。そないなこと言うだけやったら
誰でもできるわ!それが実際出来てへんからクレド軍とかいう奴らが
暴れたり、人間が人型を消そうとしとるわけやろ?
いくら理想を語っても無理なもんは無理っちゅーわけや!!」
「…確かに、俺が生きてる間には無理かもしれねぇけどよ…
でも、いつかはきっと共存しあえる世界ができるかもしれねぇじゃん!!
おまえらやクレド軍のようにしてたら、その可能性さえも無くなっちまう…っ!」
「今更そないなこと言うても、この世界に明るい未来なんてあらへんで!?
こんな汚れきった世界の行く末なんて守るだけ無駄や!」
脳裏に先生の声が響く ――――――…
過去は無くても 未来ならいくらでも作ることができる
だから生きて
広がる未来を 走り抜けて
先生が俺にこの名前をくれた意味、その願い。
俺は…俺には守らなくちゃならない大切なものがある…!
たとえそれが、間違っていても
「それでも俺は、みんなの未来を守りたい」
何か言おうとしたリクヤをノヴァは止め、口を開いた。
「それが貴方の答え、ですか」
俺は何のためらいもなく、大きく頷いてみせた。
「やはり未来は変わらない。私が見たビジョンと全く同じです。
貴方が仲間になったなら、この世界の未来も少しは変わったでしょうに…」
ノヴァの顔からはいつもの冷たい微笑が消え、本当に無表情になった。
「私にはこの先世界がどうなるのか全て見えています。このまま未来が変わらなければ、
リクヤの言う通り貴方が守ろうとしているものは無駄なものです」
その声は今迄で一番冷たく、絶望と悲観の色に満ちた聞くに耐え難いほどの
何か重いものが降ってくるような感覚を思わせる響きだった。
「その未来が…いつどこで誰が変えるかも分かんねぇだろ…っ!?
俺は信じてるぜ、あんたが見てるその世界の姿はいつか変わるだろうってな…!!」
「そうですか」
ノヴァは再び冷たい微笑を浮かべる。
「ところで、そこの皆さん。そんな所に隠れていないで出てきたらどうです?
貴方達にもお話をして差し上げましょう」
え…っ?そこの…皆さん…っ!?
っておいおいおい!!まさか…っ!!?
「お…お前ら…っ!!?」
後ろを振り返ると草むらから数人…続々と姿を現した…っ!
「バレていたのか…」
「まぁ、さすがにこの人数じゃねぇ〜」
「師匠…すみません…っ!」
「えへへ〜、ついてきちゃった☆」
「ば…っ!!何して…っ!!?ていうか…なんでお前らこのこと知ってんだっ!?」
「アンタの行動なんて手に取るように分かるわよ。一度十字軍と接触したってことは
近い内にもう一度会う可能性が高いと思って尾行してたの。
アンタのことだから誰にも言わないで一人で行こうとするだろうし」
これじゃ…俺の親切が台無しじゃねぇかよーっ!!
ていうか俺も俺でこんな人数に尾行されてんの気づかないほど
緊張してたってことか…っ!あーっ!!なんか恥ずかしいぞコレ!!!
「言ったでしょ、私達は運命共同体。一人で何とかしようなんて
かっこつけてんじゃないわよ!アンタの問題は私達の問題でもあるんだから」
「李苡…」
「そうですよ!師匠に何かあったら弟子である僕が何とかしなければ!!」
「ウィルくん、こーゆーことは同い年の男の子としてボクにも相談してほしかったなぁ〜!」
「お前にはだいぶ助けられている…今度は、俺がお前を助けたいんだ」
「お前ら…っ」
くっそぅ…泣きそうだぜ…っ!!
いや!俺はもう泣かないぞ!!散々泣いて目が腫れてんだからな!!
「さて、折角こんなにお越しいただいているのですから場所を変えましょう。
貴方達にも是非ご覧になってほしい場所がありましてね」
ノヴァがそう言うと、俺たちは強制的にテレポートをさせられた。
目も開けられないほど眩しい光に包まれたと思ったら、あのテレポート独特の
不思議な感覚がして…まるで時空の歪みに放り込まれたような感じだ…
そして俺たちは ある場所へと連れて行かれた ―――――…