生きていることが罪

 

生きることが罰

 

 

そんな悲しいこと 言うなよ

 

 

 

 

 

太陽の物語

 

 

 

 

 先生は今頃どうしているんだろう?

 考えれば考えるほどに苦しくて、怖くなる。

 

 俺が“生物兵器”だと知りながらも先生は俺を守るために戦ってくれた。

 

 先生は危険を承知で俺を拾って、育ててくれて、守ってくれた。

 なのに俺は先生に何もしてやれない…

 

 

 

 「なんて無力な兵器なんだよ…俺は…」

 

 

 

 部屋に居ると色々考えちまうから、俺は外に出て頭を冷やすことにした。

 

 真っ暗で冷たい夜。

 空は曇っていて星すらも見えない。

 

 先生も今こんな意識の中にいるのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『今の…っ!?』

 

 

 なんだ!?この押し潰されそうな感覚…っ!!

 こんな力…誰が…っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お久しぶりです。試験体593261 ―――…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たく響く声。

 

 その一言だけでも押し潰されてしまいそうな程の圧力。

 

 

 

「近いうちに…彼らは…必ずキミに接触してくる……だけど…絶対に…

  彼らと…戦ってはいけない……」

 

 

 

 「彼らはウィル君、貴方を捜していました。おそらく、連れ戻しに来たのでしょう…

  近いうちに彼らは必ず貴方の前に姿を現します。

  何か…恐ろしいことを成し遂げるために貴方の力を必要としている…」

 

 

 

 

 

 

 ああ、そうか… こいつらが…

 

 

 

 

 

 

 

 「十字軍…か…っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 たった三人…俺と同じ生き残った“生物兵器”

 でも、俺とこいつらとの力の差は歴然だった…

 

 

 

 

 

 「ご名答。どうやら話は聞いたみたいですね」

 

 

 

 

 

 感情の無い微笑で淡々と喋る男…

 まさに“生物兵器”を名乗るに相応しい存在だと思った。

 

 

 

 「でしたら、説明は要りませんね。率直に言います。

  私達と共に来なさい。貴方の力が必要なのです」

 

 

 

 やっぱり…先生や月詠が言ってた通り、こいつらは俺を連れ戻しに来たようだ。

 

 

 

 「お前らは俺のこと知ってるみたいだが、俺はお前らのこと全く知らねぇんだよ…!

  いきなり生物兵器とか言われても実感ねぇし…そもそも証拠でもあんのかよっ!!」

 

 

 

 そうだ、まだ俺は完全には認めないぞ…!

 もしかしたら偶然ってことも、人違いってこともあるかもしれないじゃないか…っ

 

 

 

 「往生際が悪いやっちゃな…今更ワイらが『間違えましたぁー』とか言うと思っとるん?」

 

 

 「まぁリクヤ。良いじゃないですか。証拠ならありますし、

  その証拠を見た時点で彼はもう現実から逃げられなくなるのですから」

 

 

 

 そう言うと目隠しをした方の男が近づいてきた。

 外見は華奢な感じだし身長だって決して高くはない…

 でも、信じられないほどの力を身に纏い、一歩一歩近づく度に圧力が増していく…

 正直立っているのもやっとで呼吸すら苦しくなる。

 

 そして崩れることの無いその微笑が、更に恐怖を煽る。

 

 

 

 「ああそうだ。私としたことが自己紹介がまだでしたね。

  私は、試験体120068…現在はノヴァと名乗っています。あちらの少女はメルト。

  そしてこの少々喋り方に特徴のある彼はリクヤといいます」

 

 

 

 何か言いたそうなリクヤを無視してノヴァという男は続けた。

 

 

 

 「ご存知の通り私達は人工的に造られ、様々な能力を植え付けられた“生物兵器”。

  しかしその能力はそれぞれ違うもので私は身体能力の人工的な増加という目的で

  作り出されました。メルトは“技記憶”、リクヤは“人工的な最終進化系の開発と

それにおける特殊能力”です」

 

 

 

 ということは、こいつらは俺と系統が違う能力を持ってるんだな…

 それにしても“技記憶”とか“最終進化系の開発”とか…一体どういうことなのか…?

 俺は多分、この異型的な体の造りが実験によるものなんだろう。

 

 

 

 「もう勘付いているとは思いますが、貴方は“人型と原型の配合”の試験体でした」

 

 

 

 やっぱりそんなところだろうと思っていたが…でも、俺の能力なんて結構半端なもんだし

 こいつらみたいな強大な力を持っているわけでもない。

 

 なのにどうしてこいつらは俺が必要だと言ってるんだ?

 

 

 

 

 「貴方は私達が持っていないものを与えられたのです。原型との配合という実験での

  副産物とでも言いますか。貴方が持っているその“生命力”。」

 

 

 「生命…力……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そう、私達は人工的に造られた命。いわば“作り物”なのです。私達の体は本物では無い。

  本物によく似せただけのレプリカみたいなもの。そんな命が長く続くと思いますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作り物。その言葉が俺の心に冷たく響いた。

 

 本物によく似せただけの 作り物 ―――――…

 

 

 

 

 

 「本物では無いこの体は、本来なら実験装置の中で生き続けるものでした。

  作り物は壊れやすい。だから本物の世界と隔離するためのガラスケースが必要です。

  しかし私達はそこを出てしまった」

 

 

 

 「実験装置から出て11年。そろそろ作りもんであるワイらの体は限界や。

  もって後一年、二年が関の山やろ…体がちっこいメルトはもっと短いかもしれへん…」

 

 

 

 

 そう言うリクヤと呼ばれた男の顔は悲しそうだった…

 こいつは多分、他の二人と違って感情とか心があるんだろうな。

 

 

 

 「リクヤの言う通り、私達にはもう時間がありません。

  これでは成し遂げられないのです。だから貴方が必要だ」

 

 

 

 「待て…お前らが後一年、二年しか生きられないんなら…俺は…どうなんだ…?」

 

 

 

 「貴方には原型の力によって与えられた“生命力”がある…

  少なくとも私達よりは生き延びることができるでしょう。

  しかしそれが何年か…あるいは何十年か…それは貴方の能力次第です」

 

 

 

 「なるほどな…そんでお前らがやりたいことを死ぬ前に俺に託そうってことか…!」

 

 

 

 

 「その通り」

 

 

 

 

 

 ノヴァは更に近づいてくる…

 

 

 

 

 

 

 「さて、そろそろ喋るのに疲れてきました。貴方もただ話を聞いているだけでは

  よく分からないでしょう。生物兵器とは何なのか、貴方は何のために造られたのか。

  それにより貴方は知ることでしょう。この世界の本当の姿を。

きっと貴方は理解する。そうしたら成し遂げなければならないことが分かるはず…」

 

 

 

 

 

 

 動けない…!声も出ない…!!

 

 迫り来る恐ろしい力に、俺は瞬きすらもできずにいた。

 先生はこんな奴らと戦ったのか…っ!?

 

 

 

 

 

 

 「私の目は過去や未来を見ることができます。そしてその過去を人に伝えることも。

  今から貴方の失われた記憶を甦らせて差し上げましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 ノヴァの手が、俺の視界を閉ざす…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺りは一瞬で闇に包まれ、意識は深く沈んでいく

 

 頭が痛くなるほどのノイズに混じって遠くからノヴァの声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よい旅を 夢のような現実を ―――――…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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