美しい桃色の花びら
どうしてだろう
とても懐かしくて 悲しいんだ
昔一緒に手を繋いでくれた人は もういない
二度と 逢えない
月と太陽の物語
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――――…
「到着です」
テレポートの独特な感覚が未だに体に残っているが、どうやら無事に着いたらしい…
俺はゆっくりと目を開けた。
するとそこは、空一面が桃色の花で覆われている場所だった
ひらひらと美しく舞うように花びらが落ちてくる。
これは以前、昔の記憶で幼い頃の自分が見つめていた…
「万年桜…」
自然と出てきた言葉。
どうしてだろう…何故、俺は名前を知っているんだ…?
「驚きました…!ルナさん、万年桜をご存知なんですね!
これは珍しい種類でしてここにしか咲いていないのですよ」
「…俺、昔ここに来たことがあるような気がする……」
そう、誰かと…
手を繋いで、空を見上げながら…ここを歩いた…
「そんな…まさか…!」
「それで、ここはどこなんだ…?」
「だって、ここは麗の家ですよ…!?」
麗の…家…?
「ここ…麗の家なのか…!?」
「正確には入り口前ですけど…」
何故だ?子供の頃に一度麗の家に行ったことがあるというのか…?
誰と…一体何のために……
「ここの桜はな、“万年桜”っていって一年中咲いてるんだってさ。
だから冬なんかに来ても花が咲いてるんだよ、不思議だよなぁ」
「ねぇパパ!お兄ちゃんにも見せてあげたいよ!!」
「そうだな、今度はお兄ちゃんも一緒に来れるといいな」
断片的に蘇る記憶
眩しくて明るい笑顔、大きくて優しい手…
誰よりも 誰よりも 大好きだった
…―――― 父さん
「そうだ…父さんと、ここに来たんだ…!」
「ほ、本当ですか!?それでは麗に会ったことも…!?」
「それは…覚えていない…。断片的にしか思い出せないんだ…」
「そうですか…それにしても何という偶然!驚きましたよ!
…実は僕もここにお世話になっていましてね、帰ってくる度に色々思い出すんですよ」
そう言う夢幻は、懐かしそうな…そしてどこか悲しそうな目で桜を見つめていた。
「麗が僕にやたら気を使うのも…僕のせいなんですよ。
昔家柄の問題で麗と色々ありましてね、まぁ僕が一方的に麗を恨んでいただけですが」
驚いた…あんなに仲の良い麗を恨んでいただなんて…
麗がいつもどことなく寂しそうに笑うのは、昔のことが原因なのだろうか…?
「麗の顔に大きな傷があるでしょう?あれも僕のせいなんですよ。
思い返すたびに改めて感じます、本当に昔の僕は愚かだった…馬鹿だったなぁって。
僕のこと、認めてくれたのは麗だけだった…いつだって麗は優しかった…」
麗と夢幻はたまにとても似ている。
笑い方とか、雰囲気とか…壊れそうなほど儚く感じるときがある。
それは、同じものを抱えているからなのだろうか…?
「それなのに、僕は麗に何もしてあげられないどころか傷つけてばかり…
麗は麗で昔のことをまだ責任感じているようだし、変なとこ頑固ですよねあの人
あ…!すみません…!長々とつまらない昔話をしてしまって…!!」
「いや、話してくれてありがとう。色々あったんだな…」
「今となってはいい思い出ですよ!不思議ですよね、昔はあんなに嫌だったのに。
さぁ、この話はこれくらいにして行きましょうか!ここから入り口まで少し歩きますが…」
その後、俺らはしばらく歩いた。
歩いてみて思うが、麗の家はかなり広いようだ…
夢幻が言うには家の周りを一周するのに一日はかかるそうだ。
…そんなに広くて逆に不便ではないのだろうか?
数分後、やっとのことで入り口に辿りついた。
あまりにも立派な門に圧倒され最初は気がつかなかったが入り口前に二人、護衛兵がいる。
一人は眠そうにしていて、もう一人はやたら嬉しそうにしていた。
「嗚呼っ!今日はなんという素晴らしき日!!行方知れずだった麗様が戻ってきてくださった!!
そしてご挨拶まで…!あのお声を録音して毎日聴いていたい…!しかし麗様がここに居るだけで
もう何事にも代えられぬ幸せっ!!これで益々舞踊の稽古にも気合が入ることだ!!」
「雅…さっきからうるさいよ…何時間も喋りっぱなしでよく疲れないね…」
あの護衛兵の会話を聞いているとやはり麗はここにいるらしい…
しかしどうやって麗に会うかが問題だ…
「あの護衛兵は僕の知り合いです、話し合いで何とかなれば良いのですが…」
この中に入るにはどうしてもこの門から入るしかない。
俺と夢幻はとりあえず護衛兵と話し合いをするために門へと出向いた。
「あれ…ねぇ、雅…あの人むーさんじゃない…?」
「夢幻殿!…と誰だ?あの男は……」
二人もこちらに気づいたようだ。
俺は相変わらず初対面の奴に男と間違えられている。
「お久しぶりです、綺羅さんと雅さん!」
「ひさしぶり…今日はお客さんが多い日だなぁ…」
「麗がここに向かったのではないかと思って来たのですが…やはり帰ってきているようですね。
あの…少し麗と話したいことがあるので会わせていただけないでしょうか?」
夢幻がそう告げた瞬間、髪の毛が長い方の護衛兵が飛び出してきた。
「麗様のご命令に従って誰とも会せるわけにはいかないっ!
例え相手が麗様の友人である夢幻殿でも会うことはできんっ!!」
「相変わらず雅さんは麗一筋ですね…しかしこちらも引き下がるわけにはいかないのですよ。
何とか連絡をつけて少しでもいいので麗と会うことはできないのでしょうか…?」
「駄目だ!麗様のご命令は絶対!!」
「麗さん…今ご当主様と大切なお話をしてる…それに、誰とも会いたくないんだって…」
「…それでも、俺は麗に会わなければならないんだ」
護衛兵の髪が短くて緑髪の男が俺を見て首を傾げた。
「珍しいな…女の人が麗さんに会いにくるなんて…」
俺が女だということに気づいていたのか…
その言葉を聞いたもう一人の長髪の護衛兵が近づいてきた。
「馬鹿を言え!どこが女なのだ!?」
「雅さん、この方…ルナさんは正真正銘、女性の方です」
「っっっ!!?」
まぁ驚くのも無理はない…むしろ初対面で女だと分かった短髪の護衛兵に驚きだ。
どうやら俺のことを女だと認識した長髪の護衛兵は、ギロリと先程の倍以上鋭い目つきで睨んできた。
「貴様…っ!!麗様とどんな関係なんだっ!!?」
「どんな…関係……」
そう問われて、自分が麗を好きだと自覚した時のことを思い出し急に恥ずかしくなった…
「なっ…!!?ほ、頬を染めるなっ!!!絶対に認めんっ!我は絶対に認めぬぞっっ!!
こうなったら力ずくでも麗様に会うことを諦めさせてやるっ!勝負だっ!!!」
何だか知らないが長髪の護衛兵は身を震わせながら怒っている…俺、何かしたのか?
武器を構えて完全な戦闘モードになってしまった…これではもう話し合いでは無理そうだ。
しかし俺もここまで来て諦めるわけにはいかない…!
「俺だって本気なんだ。すまないが、絶対に負けられない」
譲れない 想いがあるから