いつまでも想ってる

 

忘れないから

 

 

大好きだよ

 

 

この気持ちは 変わらない

 

 

 

 

 

太陽の物語

 

 

 

 

 

 俺は、自分の部屋でないベッドの上で目を覚ました。

 

 部屋には誰もいない、もう…誰も……

 

 

 

 覚えているのは、眠りに落ちる前に見た 寂しそうな笑顔

 

 

 

 その時点で分かっていたよ、遠くに行ってしまうんだな…

 

 

 

 

 「…麗」

 

 

 

 

 その名を呼んでも 無意味なのに

 

 

 

 

 「麗…っ」

 

 

 

 

 何度も何度も 繰り返す

 

 

 どこにもない姿を探して 届かない声を想って 優しい温もりを求めた

 

 

 

 

 荷物も何もない虚しい部屋の机の上に、小さな鍵が置いてあった。

 

 それは、俺が渡した“約束の印”…そしてその傍らにはメモが残されていた。

 

 

 

 

 

 ―――― ありがとう。

 

 

 

 

 

 丁寧な整った文字で、その一言だけが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 俺はその言葉と鍵を握りしめ、耳が痛くなるほど静かな部屋で泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――………

 

 

 ―――――――――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 「…ルナ、今日は無理しなくていいわよ」

 

 

 

 その後、俺はかつて麗の部屋であった場所を出て李苡に会った。

 

 どうやら麗が軍を辞めたことが知れ渡っているらしい。

 

 

 

 「無理はしていない、目は腫れているが大丈夫だ」

 

 「アンタがそう言うなら…」

 

 

 

 李苡はそれ以上何も訊かないでただ傍にいてくれた。

 …俺は涙腺が弱いのだろうか、気を抜けばまた泣いてしまいそうだ…

 

 

 

 「おいっ!聞いたかっ!?麗がグロリア軍辞めたんだって!?」

 

 

 そこにウィル、夢幻、兄さんがやって来た。

 ウィルはとても驚いている様子だったが、逆に夢幻はとても気まずそうな顔だった。

 

 

 「空気読めっっ!!!」

 

 「ゲフッ!!?」

 

 

 李苡は走ってきたウィルに凄まじい威力の跳び膝蹴りを食らわした。

 突然の出来事にこの跳び膝蹴りをモロに食らってしまったウィルは腹を抱えて悶絶している。

 夢幻は相当落ち込んでいて目の前のウィルすらも視界に入っていないようだった。

 

 

 

 「…麗は、きっと僕のせいで軍を辞めたんだと思います」

 

 

 「夢幻のせいではない…俺が……」

 

 

 

 俺が麗を好きになってしまったから、と言いかけて言葉を呑んだ。

 

 

 そうだ、夢幻は俺のことが…好き…なんだよな……

 

 あの時は恋愛感情というものが分からなくてあんな断り方をしてしまったけど…

 今では、俺にも分かる。好き…という気持ちが、どんなものなのか。

 

 

 

 好きな人が どんなに頑張っても振り向いてくれない 苦しさも

 

 

 

 

 

 「…ルナさん、自分の気持ちを誤魔化さなくてもいいです。

  もう、僕は分かっていますから。ルナさんが麗に対しどんな感情を抱いているのか」

 

 

 

 「…!?」

 

 

 

 

 そう言って微笑む夢幻は…とても優しくて、とても…寂しそうだった。

 

 

 

 

 「麗のこと、好きなんでしょう?」

 

 

 「………ごめん…夢幻……本当に…ごめん……っ」

 

 

 

 

 分かって…いたのか…

 

 なのに、どうして俺なんかに微笑んでくれるんだ…

 

 

 好きな人が、自分以外の人を好きになるなんて…俺には耐えられない

 きっと、俺が今の夢幻と同じ立場だったら…絶対に泣いていた

 

 そんなに優しく笑うことなんて 俺にはできない

 

 

 

 

 

 「俺は…夢幻の気持ちに応えてやることはできない…麗のことが好きなんだ。

こんなことを言う自分は…すごく我侭で、酷い奴だ…自分でも、そう思う…っ

  お前の苦しみも…本当によく分かっているのに……助けてやることも…できなくて…!」

 

 

 

 「そんなこと言わないでください。

  確かに最初フラれた時は結構傷つきましたけどね、でも今は違います。

  貴女は恋愛感情というものを知り、僕の気持ちを分かってくれた…それだけで充分です。

例え、傍にいるのが僕でないとしても貴女が幸せになれるなら…」

 

 

 

 

 

 夢幻は静かに微笑む。

 

 いつも何かあるとすぐ涙ぐむのに、どうして一番辛いときには笑っているのだろう

 

 

 

 そんなことされたら こっちが泣きたくなってしまう

 

 

 

 

 

 

 「さて、では早速あのお節介麗を追いかけましょう!」

 

 

 「…え?」

 

 

 

 にこっと笑って夢幻は唐突に言い出した。

 

 あまりにも突然すぎる発言に俺だけでなく李苡まで目を見開いていた。

 

 

 「追いかけるって…アンタ麗がどこに行ったのか分かるのっ!?」

 

 「小さい頃からの付き合いですよ?麗の考えることなんて大体分かります」

 

 

 「…でも追いかけたって、きっと迷惑なだけだ。

  昨日、俺の伝えたいことはちゃんと麗に伝わったはず…

  それなのにここを出て行ってしまった…それは、そういうことなのだろう」

 

 

 「言ったでしょう、麗はただのお節介なのです。

  まったく…あの人は本当に変なところばっかり不器用なんだから…」

 

 

 

 夢幻は苦笑いをしながら小さく溜息をついた。

 

 

 

 「麗は、僕に気遣ったのでしょう。僕がルナさんを好きなこと知ってましたからね。

  ですから、麗はルナさんのことを嫌いなわけでも、迷惑がってるわけでもありません」

 

 

 「…っ!ほ…本当か…!?」

 

 

 「麗とは長い付き合いです、あの人が考えそうなことは僕が一番よく知っている」

 

 

 

 もし…麗が本当に俺のことを嫌いじゃないなら…

 最後に言えなかったあの言葉、今度は聞いてくれるだろうか…

 

 

 

 「あのよ、余計なお世話かもしれないけど、夢幻はそれでいいのか?

  ルナを麗のところに連れてって…それってお前が一番辛い選択じゃねぇの?」

 

 

 

 ウィルが気まずそうに問いかけた。

 確かに、ウィルの言うとおりだ…夢幻は…本当にそれでいいのだろうか…?

 

 

 

 「…僕は、ルナさんに幸せになってほしい。世界で一番、幸せになってほしい。

  でも…僕ではルナさんを幸せにすることはできないのです…悲しいことですが。

  だからせめて、ルナさんが幸せになるためのお手伝いくらいはしたいのです」

 

 

 「夢幻…」

 

 

 「貴女には笑っていてほしい、少しでも…役に立つことができるなら幸せです。

  僕にはこんなことくらいしかできないけど、それで貴女が笑ってくれるなら…僕は…」

 

 

 

 

 どうして…どうしてこんなにも俺なんかに優しくするんだ…

 俺は…お前に何もしてやれないどころかお前を傷つけてばかりだ…なのに……

 

 

 どうか 神様がいるならば

 

 夢幻を、俺なんかよりもずっとずっと幸せにしてやってください

 

 

 

 祈ることしかできない自分が悔しくて、悲しかった

 

 

 

 

 「ありがとう…夢幻」

 

 

 

 

 そして、ごめん

 

 こんな俺を好きになってくれて ありがとう そして ごめんな

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで、どうやって麗がいる場所まで行くのよ?」

 

 「あ、はい!それは僕がテレポートで…しかし場所がとても遠いので

  僕の力では自分と、あと一人しか連れて行くことができません…」

 

 「となると行けるのは夢幻とルナの二人か…頑張ってこいよ!」

 

 「俺らがいない間任務の方は大丈夫か…?」

 

 「心配しなくていいわよ、他の隊から代打で来てもらうから。

  それよりもアンタは自分の心配をしなさい!夢幻、ルナのことは頼んだわよ!」

 

 「はい!任せてください!!」

 

 

 「…………」

 

 

 …どうしたのだろう、さっきから兄さんは黙ったきりで元気がない…

 

 

 「兄さん…気分が優れないのですか?」

 

 「あ…!ごめんね…大丈夫だよ…!」

 

 

 顔では笑っているけど…どうも様子がおかしい…

 

 

 

 

 

 「ルナちゃんは…ボクのところに帰ってくるよね…?」

 

 

 

 

 そう尋ねたときの兄さんは、とても不安そうな顔で声も弱々しかった。

 

 

 そして一瞬だけ、普段の兄さんからは感じたことのなかった異様な雰囲気を感じた。

 

 

 

 「あれ…?ボクってば何訊いてるんだろう…?

  なんか変なこと言っちゃってごめんね!少し頭がぼーっとしてたみたい」

 

 

 

 次の瞬間にはその異様な何かは消え、いつもの兄さんに戻った。

 

 一体…今のは何だったのだろう……

 

 

 

 「兄さん、大丈夫ですか…?」

 

 

 「うん!さっきはちょっと変だったけど今は全然大丈夫だよ!!

  多分ただの寝不足か何かだよ、心配しないで!」

 

 

 「そうですか…それならいいのですが…」

 

 

 「それよりも!ルナちゃん頑張ってね!!一緒に行けないのは残念だけど…

  ボクも任務頑張りながらルナちゃんが笑って帰ってくるの待ってるね!」

 

 

 「はい、ありがとうございます。兄さんも決してご無理だけはしないでくださいね…」

 

 

 

 

 兄さんのことが少し心配だが…李苡もウィルもいるし、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 「ルナさん、準備はいいですか?」

 

 

 

 夢幻の問いに頷く。

 

 

 

 

 

 

 「テレポート!」

 

 

 

 

 

 

 技の詠唱をする声が響き、光に包まれ目を閉じた。

アリス誘拐事件の時に経験したテレポートの感触が甦る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光の中で 麗を想った

 

確かに聞こえた 最後に麗が残した言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの夢の続きを 見たいんだ ―――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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