そんな言葉
できれば一生 聞きたくなかった
月と太陽の物語
麗の様子がおかしい。
俺のことを見る目が…すごく悲しそうだ……
そんな目で見ないでくれ 最悪の言葉が 頭に浮かぶ
「……ルナ殿、話がある」
手合わせを終え、麗が刀を鞘に納めながら言葉を発した。
…なんとなくだが、この続きが良い話ではないと分かってしまった。
俺は無言のまま麗を見つめる。
「この手合わせを、今日で終わりにしたい」
それは できれば一生、聞きたくなかった 別れの言葉
目の前が真っ暗になっていくのが分かる。
これは…深い、深い絶望に堕ちていくときの…感覚……
言葉が出てこない
俺はなんて…麗に言えばいいのだろうか
俺に麗を引き止める資格はない。
この手合わせも、俺が言い出した勝手なワガママ。
麗はそのワガママに付き合ってくれた。
だから…いつ突然やめると言われても、俺が止めることはできない。
そんな 脆い関係の上を いつも不安になりながら歩いていた
「…どうして?」
やっと出せた言葉は、意味のない問いかけ。
「……もう、君と会えないからだ」
返ってきた言葉は、信じたくない現実。
「…そう、か……」
引き止めることすらできない俺は、ただ返事をするだけ。
「君と会うこともなくなる。話すのも…きっとこれが最後だ」
「…どこか遠くに…行くのか……?」
麗は無言のままだった。
逆にその無言が、俺の言葉の通りだと言っている気がして…
ただ 泣くことしか できなかった
「どこに…行くの……」
「……それは言えぬ」
「どのくらい…遠いの……?」
「……………」
意味のない問いかけを繰り返す。
少しでも繋ぎ止めたくて、震える声を必死に絞り出した。
返事のない問いかけを 何度も何度も呟いた
「…君は、幸せになるのだ」
麗が発した言葉に、首を横に振った
幸せになんてなれるはずがない、麗がいない世界で…幸せになんてなれない
「大丈夫、君なら…拙者がいなくとも幸せになれる」
久しぶりに見た 麗の優しい笑顔
でも違う…俺は、こんな寂しそうな顔が見たいんじゃない…!
「遠くから、祈ってる。君が幸せであることを…」
「やだ…遠くからじゃ……嫌だ…!」
「…君の幸せが……拙者の幸せなのだ…」
「だったら…!」
傍に居て
その言葉が どうしても出てこない
俺の勝手な感情で、麗を…困らせたくない
本当に…好きだから……
だから…迷惑かけたくない…
「……っ」
言葉を飲み込んだ
これ以上、麗の負担にはなりたくない
涙は止まらない。
声も出さず、溢れてくる気持ちを地面に落とす。
「すまない…」
それだけを言い残して麗は去っていく。
涙で世界が歪む
麗の姿が見えなくなっていく
引き止めることも、追いかけることもできない
想うことも、忘れることもできない
さよならも 言えない