君は親友の想い人
だから、もう傍には居られない
君のことを 想えない
月と太陽の物語
あれから…そう、君の過去を知ったあの時から
もう、一緒には居られないと 思った
君が医務室で休養している間も拙者は一度も顔を出さなかった。
忙しかったわけではない、自分から決めたことだった。
会いたくなかった…わけではない……むしろその逆だった。
だからこそ、拙者は君に会うことができなかった…
君に会ったら、きっと親友を裏切ることになる。
これ以上、君の近くに居たら もう戻ることができなくなりそうだから
君から離れることにした
過ちをおかす前に
君を 深く 想ってしまう 前に
どうして、こんなことになってしまったのだろう
君は親友の恋焦がれる人
拙者のせいで幼い頃より夢幻は苦労をしてきた。
本家、分家…そんなくだらない家柄の事情に巻き込まれて…
拙者がいなければ、夢幻の人生が狂うことはなかった
せめてもの償いとして拙者は親友の幸せを願った。
夢幻がその初恋の女性と結ばれることを…心から祈っていた。
「………」
約束の印として渡された、君の部屋の鍵。
そして、重い罪悪感
これを受け取ってしまえば、もう戻れなくなる…分かっていたのに……
分かっていながら、拙者は受け取ってしまったのだ。
それは親友に対する 裏切り
そして君を深く傷つけることになるであろう 約束
「…必ず、助けに行くから……」
しかし、あれは本心だった。
本当に…本当に、心から君を守りたいと思った。
今思えばその時点で、戻ることなどできなくなっていたのだろう
拙者は 君のことが ―――――
『麗、いるか?手合わせを頼みたいのだが…』
扉の向こうから聞こえてきた声のおかげで思考は踏み止まった。
しかしその声というものが、余計に拙者を苦しめる…君の声だった。
「…ああ、大丈夫だ。準備をするので先に行っていてくれ」
『わかった!先に行って待っているぞ…!』
扉越しに会話をする。
君の顔は見えない…しかし声を聞けば君が今笑顔だということが分かる。
脳裏に焼き付けられた君の笑顔
その笑顔を見るたびに胸が…締めつけられるほどに苦しい……
しかし拙者が君に本当の想いを伝えることはない
親友を裏切ることはできぬ
これが夢幻への せめてもの償い
幼き頃にこの右目の傷に誓った 約束
君を想えば想うほどに罪悪感は積もり、罪が増えていく
長らく続けてきたこの手合わせも…今日で終わりにしよう。
君の前から いなくならなければ
遠くに行こう、君がいない所へ
そうすれば…もう二度と君に会うこともなくなる
そして君の笑顔を見ることも なくなるだろう ――――…
離れていくのも この苦しさも 全ては君を想うが故の 罰