ルナが部屋に閉じこもった
しかもルナの部屋から異常なほどの冷気が溢れ出している
…どう考えても原因はひとつね
月と太陽の物語
私は目が覚めてすぐに異常を感じた。
…寒い
いや、今は冬だから寒いのは当たり前なんだケド…この寒さは異常よ!
なんていうか…寒いっていうよりは、冷たいって言った方が正しいかも。
渋々起き上がってさっさと着替えを済ます。
『リリィさん!大変です!!』
するとドアの向こうからC隊のココの声がした。
珍しいわね…いつも落ち着いてる、というかおっとりしてるあの子が慌てるなんて…
「どうしたのよ?」
「ルナさんの部屋が…!あの…その…!」
「落ち着きなさい、ルナの部屋がどうしたの?」
「あの…凍っているんです……!!」
その発言に私はしばし言葉を失った。
…部屋が凍ってるってどういうことよ?この寒さも…もしかしてルナの…?
私はとにかくルナの部屋に向かった。
「…凍ってる……わね…」
そこで目にしたものとは、まさしくココの言ったとおり『凍ってる部屋』だった…
ドアの隙間から異常なまでの冷気が溢れ、ドアの周りも凍りついている。
まるで『誰も入らないでくれ』と言っているようだ…
「ちょっ…!ルナっ!ルナっ!?」
「私も呼びかけたのですが…」
まったく!心配かけさせるなって言ってるのに何度も何度も…!!
とりあえずサニーに訊いてみなくちゃ…!
「もしもし!?サニー!!」
『どうしたのリリィちゃん!そんなに慌てて…!』
「ルナが部屋を凍らせて閉じこもってるの!」
『え…!?ルナちゃんが…!?』
電話越しに聞こえるサニーの声はとても焦っていた、そして少し黙り込んだ後
少し落ち着いた声になりこう問いかけてきた。
『…昨日ルナちゃん、何かすごく嫌なこととかあった?』
「それは…私には分からないけど……どうしてそんなこと…?」
『うん、あのね…昔も一回だけこういうことがあったんだ…。
小さい頃に一回だけボクとケンカしちゃって…そしたらルナちゃん、部屋に閉じこもって
ドアや部屋の中を全部凍らせちゃったんだ…』
「なるほど…ルナが精神的に深く傷ついたときに起こる現象…ってわけね…」
『…ボク、またルナちゃんに何かしちゃったのかな…!?』
「いや…原因はサニーじゃないわ。多分…」
『多分…?』
「なんでもないわ、気にしないで。こっちはこっちで何とかするから」
原因はおそらく…というか確実に麗との関係ね…
『ボクも今からそっちに…!』
「何言ってんの、女子寮は男子禁制よ。それにこれは女同士の方が何かといいみたいだし」
『…わかった、リリィちゃんに任せるね…!何かあったらすぐ連絡ちょうだい!』
「任せなさい、それじゃあね」
そして私は電話を切り、ルナの部屋に突入しようとした。
「あ、ココも任務に戻っても大丈夫よ?ルナは私が何とかするから」
「だ…大丈夫でしょうか…?」
「ルナの扱いにはもう慣れてるから」
「そ、そうですか…それでは失礼します、どうかお気をつけて…!」
ココは軽くお辞儀をしてからこの場を立ち去った。
さーて、どうやって突入したらいいかしらねぇ…
…と言っても選択肢はひとつ
強 行 突 破
「ウラアァァッ!!!」
私の華麗な回し蹴りによりドアを破壊し(修理代どうしましょ)ルナの部屋に突入した。
するとそこは驚いたことに本当に全てが凍りついていた…
天井には氷柱まで…ここはどこの氷山だ……
そしてルナは凍りついたベッドの上にうつ伏せで倒れこんでいた。
「アンタ何してんのよ!?」
「…李苡か、すまん……出ていってくれ…」
ルナは顔を上げない。
しかし出ていけと言われて出ていったらドアを破壊した意味がなくなってしまう。
「雪の中行方不明かと思ったら今度は氷の中で引きこもり…
どうしてそんな寒い場所ばっか好むのかしらねぇ…!」
「…………」
「…麗と何かあったの?」
「…っ」
麗のことを訊くとルナの体がビクッと反応した。
「麗が…俺ともう会わないって……」
「……どうして?」
「遠くに……行くんだ………俺を…避けるために…」
ルナの声は弱々しく震えていた。
きっと泣いてたのね…顔はまだうつ伏せのままだけど…
「最後に…幸せになれって……どうして…離れるのに……優しくする……っ」
「…それは、アンタが大切ってことでしょ」
「だったら…何故俺の前で笑わなくなった……!なんで…離れていくんだ……っ!」
「…………」
「麗は…きっと俺のことが……嫌いになったんだ……!」
いや、麗がルナを嫌いになったわけではないと思った。
そういえば夢幻と麗は幼馴染だって聞いた…となると、あのお人好しのことだ
夢幻がルナのことを好きだから自分は身を引くことにしたのだろう…
そうすると、麗が離れていく理由というのは…むしろルナが思っていることの逆…
「ルナは…このまま麗が離れていくのを見てるだけなの?」
「…俺が……麗を止めることは…できない……そんな資格…ない…から」
「だったら、きっともう二度と麗に会うことはなくなるわね」
「…っ!!」
「でもそれがアンタの選んだ道なんでしょ?」
「……俺…は……っ!!」
ルナがやっと体を起した。
目からはいくつもの涙が零れ落ちている。
「俺は…麗が好きだ…っ!離れたくない…傍に…居てほしい…っ」
ルナがこんなにも苦しそうな声を出すのは…それほど想いが強いからだろう。
ここまでくるのにきっと色々な葛藤があったはず。
初めて誰かを好きになって、初めて知った感情に迷ったり焦ったり、苦しんだりもしたのだろう…
その全てを、この一言に変えるのが どれほど大変だったことか
「その言葉は麗に言いなさい。私に言ってもどうにもならないわよ?」
「麗…に……?」
「このままじゃどっちにしても麗はアンタから離れて遠くに行っちゃうわ。
だったら、自分の気持ちを伝えておいた方がずっといいと私は思うけどね」
ルナは黙り込んだ。
ここからはもう私が口出しすることじゃないわ、アンタが自分で歩かなきゃ。
「じゃ、私はここら辺で失礼するわ。
今日は任務も休みだし、ゆっくり一人で考えることね」
そして一人黙り込んだルナを残して氷の部屋を後にした。
…お節介と思われるかもしれないけど、やっぱり心配なのよ アンタのこと