白は黒を埋め尽くす
黒の意識は白に支配されていく
何もない、寂しい世界に堕ちていく中
色鮮やかな花を思い出した
幼い頃に父親と見た 空を覆うほどの ―――――…
月と太陽の物語
白い世界に ヒラリ ヒラリ
あれは、何という花だったか…
思い出せない
ただ 好きだった
それだけは覚えている
あの人は…そうだ、あの花に似ていたんだ
あの人…?誰だ?それは……
思い出せない
ただ …ただ ――――――…
『あなたは、だぁれ?』
突然、少女の声が響いた
視界はまた黒に染まり、あの花は…あの人は思い出せないまま
『わたしは、だぁれ?』
その問いにも、答えられず
『わたしは、あなた。あなたは、わたし』
少女の声は、クスクスと笑っていた
『ねぇ、どうして眠ろうとするの?』
理由などない…
最初から、そんなものはどこにもなかった
『ダメよ、あなたはまだ眠ってはいけない』
何故だ?お前は俺なのだろう?
ならば何故、俺の眠りを妨げようとする?
もう いいだろ
『だって、まだ“約束”が果たせてないもの』
約束……?
なんだ、それは…?
一体誰と…何の約束を……俺は…
『あの人はきっと待ってる。“わたし”の約束と“あなた”の約束』
少女の声は遠くなっていく
待て…あの人とは…誰なんだ…!
どうして“わたし”は知っている…!
“俺”も“あの人”と約束を交わしたのか…?
何故…こんなにも胸が苦しい……
どうしてもあの人を思い出せない…
それが 涙が落ちるほどに 悲しい
“俺”の意識は薄れていく
暗くて血生臭い“過去”という名のセカイに堕ちていく ――――――…
そのセカイで“わたし”と“俺”が手を繋いだ