麗との稽古を始めてから数日

 

やはり俺の見込みに間違いはなかった

 

確実に俺は強くなったと思う

 

 

ああ、そうそう

 

色んなことがあり過ぎて忘れていたが

 

俺と兄さんがグロリア軍に仮入隊してから今日で一ヶ月

 

つまり、仮入隊期間は終わり

 

 

 

俺達は正式な隊員となる

 

 

 

 

 

太陽の物語

 

 

 

 

 

 「サニー、ルナ、今日で君達の仮入隊期間は終わりだ。

  チーム内でのトラブルもなく、一ヶ月S隊で任務をこなしてきた。

  よって、今ここに君達を正式な隊員として認めよう」

 

 

 司令室にて、鉄司令官からの正式な認可を得た。

 そこには俺と兄さん、そして李苡、ウィル、夢幻と、S隊のメンバーが揃えられた。

 やっと今日から俺も正式なS隊の一員となるわけだ。

 

 

 「わーい!これでボクもルナちゃんもグロリア軍の仲間入りだぁ♪」

 

 「最初はホントどうなることかと思ったけど…

なんとかルナもサニーも無事に正式隊員になれて良かったわね、オメデトウ」

 

 「そうだよなー!ルナもあの時に比べて随分丸くなったっていうか、落ち着いたっていうか…

  まぁとにかく色々あったけど正式入隊おめでとー!!」

 

 「僕はS隊に移動してきたばかりなので入隊当初の頃は分かりませんが

  師匠のお話を伺うと結構な苦労をされたようで…ルナさん、サニーさん、正式入隊おめでとうございます!」

 

 

 「みんなありがとー!これからもヨロシクね!」

 

 「李苡、ウィル、夢幻…本当にありがとう。特に李苡には入隊当初、俺のせいで色々な迷惑をかけた…

  本当にすまないと思っている…そして今俺がここにこうしていられるのも皆のおかげだ」

 

 

 

 一ヶ月…俺にとっては色々なことがあった。

 

 グロリア軍に初めて入隊した時、俺は嫌で嫌でしょうがなかった。

 今まで一人で戦っていたのに、何故今更こんな奴らと共に戦わなければならないのだと思っていた。

 

 

 その頃の俺は冷たく、本当に心までもが凍てついていた。

 

 

 このままずっと一人でいいって思っていた。

 

 笑うことなんて…もうできないと思っていた。

 

 

 

 だけど、今は違う

 

 

 この一ヶ月、本当に大切なことを沢山知った。

 …いや、教えてもらったと言った方が適切であろう。

 

 

 李苡、ウィル、夢幻…そして今ここにはいないけど、アリスや麗にも感謝している。

 

 

 

 本当に ありがとう…

 

 

 

 

 

 「さて、君達は正式隊員となったのでこれからは一人一部屋ということになる」

 

 

 「あ、そっかぁ!ウィル君のお部屋から出ていかなくちゃならないのかぁ…

  う〜ん、残念だよ〜!会えないわけじゃないけど何だか寂しいね〜」

 

 「あの狭い部屋で男二人の共同生活は大変だった…!でもまぁ楽しかったけどな!!」

 

 

 ああ、そういえばそうだったな…

 仮入隊の一ヶ月間は寮の部屋が貸してもらえないので、

 兄さんはウィルの部屋に、俺は李苡の部屋に居座らせてもらっていた。

 

 と言うことは、俺も李苡の部屋を出て一人部屋になるということか…

 …よりによってこの季節が来るという時にいきなり一人とは……。

 いかんいかん…たかが雪ではないか…!俺はもうあの頃の俺とは違うんだ…!!

 

 

 「やっとアンタとの共同生活も終わりね、最初はホント息が詰まるかと思ったわ…

  まぁ、今では少しマシになったというか…結構楽しめたわよ、二人っていうのも悪くないかもね」

 

 「李苡、今までありがとう…色々と世話をかけたな」

 

 「ま、どーせ同じ女子寮内なんだから寂しくなったらいつでも遊びに来なさい」

 

 

 李苡は俺の背中をバシバシと叩いて、いつもの強気な笑みを見せた。

 この李苡の強気な笑みを見るとすごく励まされる。

 

 しかし俺ももう18歳だ、いつまでも李苡に甘えていてはいけない。

 

 

 

 「これがサニーの部屋の鍵で、こっちがルナの部屋の鍵だ。

  自分用とは別に合鍵も渡しておこう、無くさないようにな」

 

 

 鉄司令官は俺と兄さんに各二個ずつ鍵を渡した。

 兄さんはその金属の小さな鍵を嬉しそうに受け取り、目をキラキラと輝かせていた。

 

 

 「わーい!ボクのお部屋の鍵だぁ!司令官のおじちゃん、ありがとー♪」

 

 「おじ…っ!?…まぁいい、これからも正式隊員として任務を頑張ってほしい。

  それでは解散していいぞ。サニーとルナは今日中に荷物を自分の部屋に移動しておきなさい」

 

 「はーい♪」

 

 

 どうやら兄さんの心配は要らないようだな。

 一人部屋で大丈夫だろうかと思っていたが、逆に嬉しそうだ。

 

 

 「ルナちゃん!はい、ボクの部屋の合鍵!いつでも遊びに来れるように渡しておくね!!」

 

 「兄さん…ありがとうございます」

 

 

 俺は兄さんから合鍵を受け取った。

 これでもし兄さんに何かがあったらすぐに部屋に入ることができる。

 

 

 「俺の合鍵も兄さんに渡しておきます、どうぞ」

 

 「でもボク男の子だから女子寮に遊びに行けないし…

  あ!その合鍵はリリィちゃんに渡しておいた方がいいと思うよ!

  ボクなんかより頼りになるし、女の子同士のほうがきっと使う機会も多いからね!」

 

 「兄さんがそう言うのなら…李苡、俺の合鍵を受け取ってくれるか…?」

 

 「アンタが言うとなんか男のプロポーズみたいね…

  でもそれはとっておきなさい、いつか男ができたらそいつに渡した方がいいわ」

 

 「男に渡しても女子寮は男子禁制なのだから意味がないではないか」

 

 「バカねー、女が合鍵を渡すってことは自分の全てを許すってことなのよ!

  だから使わなくても渡すってことに意義があるの、わかった?」

 

 「いや全然分からん」

 

 「…だろうと思ったわ……ルナにはまだ乙女心の理解はできないか…」

 

 「うわっ!お前いい歳こいて乙女心とか…っ!!

  大体乙女っつーのはなぁ、20歳以下の純粋な女の子のことを言うんだぞ!?」

 

 「バカ恐竜よ……テメェの命日は今日で決定だ…」

 

 「は…ははは…ホラ、今のは軽いジョーク…デスヨ…!

  アノ…マジでごめんなさい……ちょっ…!まっ!!話を…うぎゃあああぁぁあ!!!」

 

 「うわぁあ!!師匠ーっ!!」

 

 

 夢幻はそのショッキングな光景を見て震えていた…。

 しかしながら毎回ウィルもよく懲りないな…そしてよく生きていられるな…

 

 

 

 

 

 結局、合鍵はまだ俺が持っているということになった

 

 俺達はとりあえず部屋に戻り(ウィルは医務室に運ばれた)

荷物を自分の新しい部屋に移動させた…と言っても俺は荷物などほとんどないのだが。

 

 

 「…今日から一人部屋か」

 

 

 部屋には最初から置いてあるベッドと机だけがあった。

 李苡の部屋に比べ、すごくシンプルというかなんというか…

 とにかくガランとしている。…まぁ何も置くものがないから仕方がない。

 

 

 

 静かで…なんか、寂しい

 

 

 

 

 「一ヶ月前はこれが普通だったのにな…」

 

 

 静かなのが不安だとか、一人なのが寂しいだとか、一ヶ月前の俺には考えられない。

 昔は自ら好んで静かな場所に一人でいることが多かったのに…

 

 

 俺はこの空気が嫌だったので窓を開けた。

 

 すると冷たい空気が部屋に入ってきて、俺はその風を心地よいと思った。

 …それと同時に、雪の季節がもうすぐだと分かり少し憂鬱になった。

 

 

 

 

 白い 悪夢が 黒を 飲み込む

 

 

 

 

 一瞬、『あの日』のことを思い出してしまい、どうすることもできない恐怖に震えた。

 

 俺は真新しいシーツの敷かれたベッドに倒れこむように横になった。

 白くて冷たい…汚れのない白のシーツ。

 

 

 

 悪夢が来る 逃げられない

 

 静かな場所 虚無の世界 苦しい記憶 全ての恐怖

 

 

 

 

 

 白い 悪夢が 黒を 飲み込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たい風が知らせるのは もうすぐやってくる 白の恐怖と雪の季節

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Back        Next