困りました…
ルナさんには会って早々告白なんかして
これから任務などで一緒になるのに気まずいじゃないですか…
あーもう、僕はなんてバカなのでしょう…!
それに麗だって…
僕のせいでいつまでも苦しんで
負担ばかりを一人で背負おうとして
僕は
好きな人も
大切な親友も
傷つけているだけで
何もできない
月と太陽の物語
今日はいろんなことがありました。
捜し続けた初恋の人…ルナさんにお会いすることができました。
そしてその勢いで告白して、見事にフラれました……。
その時僕はつい泣きながら逃げてしまいましたが、その後麗に言われて気がつきました。
つらいのは、きっと僕の想いを知りながらも断るしかなかったルナさんなのです…。
僕はそんなルナさんを残して泣きながら逃げてきたのです…
なんて男らしくない男なのでしょう…!こんな自分に幻滅します……。
そして、親友である麗に対しても僕は傷つけてばかり…
麗は責任感が強すぎるのです。そこが問題なのです。
小さい頃の話を今になっても引きずっていて、それを全部自分のせいだと思い込んで…
僕はもう気にしてないし、大体悪いのは麗ではないのになんであんなに
麗が苦しまなければならないのでしょう…むしろ悪いのは僕の方だと言っているのに聞かないし…
麗は、自分自身を大切にしていません。
自分のことよりも相手ばかりに気を使って…そして苦しいことやつらいことばかりを
一人で背負って、自分の身など考えずに人のことばかりを心配して…
優しすぎるのです。
その優しさと責任感の強さで、このままではいつか麗自身が壊れてしまいます。
僕は、それを知りながらも何もどうすることもできない。
一番麗の負担になっているのは僕なのに…
「…はぁ………」
日記に書きとめたことを何度も何度も自分で読み返しては溜息をつく…
ああ、なんて男らしくない行為なのでしょう…
今頃ルナさんは何をしているのでしょう…
僕のせいで思い悩んでいなければ良いのですが…
麗もまだ部屋に戻ってきてないみたいですし…
「…はぁ…………」
やはり考えれば考えるほど溜息しか出ません。
僕は一体どうしたら良いのでしょうか……
『夜遅くに失礼致す、夢幻、まだ起きているか?』
そんなことを思っていると、ドアから麗の声がしました。
珍しいですね、麗はいつもドアを二回ノックしてから声をかけるのですが…
両手でも塞がれているのでしょうか?
「はい、起きてますよ!今開けますね!」
そして部屋のドアを開けると…
「えっ…!?ル…ルナさん……っ!?」
「…よぉ」
なんとそこには今話題にしていた麗とルナさんがいたのです!
しかも…なんて言うか……状況がよく分からないのですが…
麗は何故か顔から袴まで土で真っ黒に汚れているし、ルナさんは全身傷だらけだし…
それよりなにより驚いたことが…
あの女性恐怖症の麗が!あの警戒心の強そうなルナさんを!!
お…お姫様抱っこ…しているのですよ……っ!!!
「れ…麗……あの、僕にはイマイチ状況が…よく理解できないの…ですが……?」
「訳は後で話す、それよりもルナ殿の治療を頼みたいのだが…」
「そ、そうですよね!!ではそこのベッドにルナさんを…!」
事情は後で聞くことにして、最優先事項であるルナさんの治療をすることにしました。
麗は抱えていたルナさんを優しく丁寧にベッドに下ろしました。
その時にルナさんはジッと麗の顔を見ていましたが…何を思っていたのでしょう?
「では、ルナさんの治療を始めます。“願い事”!!」
回復技を発動させ、ルナさんの体中の傷を治療していきます。
しかしルナさんはその間、なんとも複雑そうな顔でいました。
やはり今日の告白のことで思い悩んでしまっているのでしょうか…
「傷は完治しました、痛みなどまだありますか?」
「いや…痛みはない……ありがとう…」
その後の気まずい雰囲気が怖いので、僕はすぐ麗に事情を訊くことにしました。
「それで、何故このようなことになっているのですか?」
「実は…」
それから麗に状況を一から丁寧に教えてもらいました。
麗が土まみれで、ルナさんが傷だらけな理由も分かりましたが…
「状況は分かりました、しかし…麗……貴方は“女性恐怖症”のはずでは…?」
話を伺うと、麗はすでにルナさんが女性だということを知っている…
それなのにこうして普通に麗がルナさんと接することができるのが不思議でした。
「女性…恐怖症……?」
ルナさんが興味を持ったらしく、僕に問いかけてきました。
「はい、麗は極度の女性恐怖症なのですよ。
女性を前にすると赤面して呂律が回らなくなり、何を言っているのかも解読不能、
更には呼吸もまともにできなくなり、熱まで出てきて、仕舞いには気を失って倒れてしまう
という重症なものでして…」
「そうなのか…?」
「そ…そういうことなのだ…」
「しかしある程度慣れた女性…例えば同じ隊のリオさんやディーアさんなどは
それなりに平気ですよね、と言っても慣れるまでが大変でしたが」
そこまで重症な女性恐怖症である麗が、初対面の女性であるルナさんを前にして
平常心でいられること、そして何よりルナさんを抱えてきたことに驚きを隠せません…!
「拙者も不思議なのだ。何故かルナ殿には発作が起こらぬ…
最初に出会った時も、もしや女性かと思ったのだが…発作が起こらぬ故に勘違いを…」
「俺の外見が全然女に見えないから平気なんじゃないか?」
「いえ、それはありませんよ。麗はどんなに外見が男らしい女性でも体が勝手に反応して
発作を起しますし、逆にどんなに女性に見える男性…もしその方が女装をしていても
麗の体は反応しないので発作を起こしません、つまり外見は特に関係しないのです」
「なるほどな…」
「そういえば麗、女性に触れたのはもしかして初めてのことではないですか?」
「た…確かに…今まではこんなことなかったからな…」
麗は改めて自分がルナさんをここまで抱えてきたことを思い出したのでしょう、
急に頬を赤らめて下を向いてしまいました。
「あ、もうこんな時間…ルナさん、そろそろお部屋に戻った方が良いですよ?」
「この夜遅くに女子が男の部屋にいては何か勘違いをされるやもしれぬ」
「…そうだな、しかしその前に…麗、頼み事があるのだが」
「何だ?」
「暇な時でいい…またこうやって俺に稽古をつけてほしい」
そう言うと、ルナさんはジッと麗の顔を見ました。
その瞳はまさに真剣そのもの。今日おこなった麗との手合わせが余程勉強になったのでしょう。
「いやしかし拙者もまだ未熟な故、人に堂々と稽古をつけられる程の腕は…」
「麗、僕からもお願いします!!」
「夢幻…」
ここでルナさんのお役に立てなかったら、それこそ僕は男として情けない限りです!!
…と言っても、実際僕自身は何のお役にも立てないのですが……
「僕は麗みたいに強くないから、戦闘に関してルナさんのお役に立つことができません…
でも!怪我をした時などはいつでも僕を呼んでください!治療でしたら僕でもお役に立てるかと…!!」
「ありがとう……」
こんなことしかできないけど、それで貴女が笑ってくれるなら…
「…分かった、夢幻がそこまで言うのならば致し方あるまい。
拙者の都合がつく限り、ルナ殿に稽古をつけさせていただこう」
「本当か…!」
「うむ、しかし日中は任務がある故、稽古をつけるならこのくらいの時間になってしまうが…
それと、拙者は不定期に特別任務に参加しなければならないので稽古場に行く前に
手数を掛けるが拙者の部屋に来て確認をとってほしい」
「時間など構わない…!稽古は夜だな…!わかった、これから宜しく頼む…!!」
ルナさんは嬉しそうに笑いました。
まさかあのルナさんがこんなに嬉しそうに笑うなんて…想像も出来ませんでした…!
麗も同じようで、その笑顔を見て少し驚いているみたいです。
その後、ルナさんは自分の部屋に戻っていきました。
ルナさんが帰ってから麗は自分の腕を眺めて何か考えているようです。
「自分の腕を眺めて何を考えているんですか?」
「いや…何故ルナ殿だけは平気だったのかと思ってな……」
「ああ、発作のことですか?」
「うむ…」
「それは多分、麗とルナさんは似ているからですよ」
「…似ている……?」
「麗とルナさんは僕から見ても似ていると思います。
それは、外見や行動とかではなく…もっと内面的な点でとても似ています。
どこが…と言われると答えにくいのですが、きっとそのうち分かってくるでしょう」
「……」
僕には二人が持っている同じもの、なんとなくだけど分かります。
今はまだ、言葉にできるほどの確かなものではありませんが
これだけは貴方達に伝えておきたい
どうか 壊れませんように