回復役の奴がS隊に移動してくる
これでS隊は五人になるわけだ
…また騒がしい奴だったらどうしよう
月と太陽の物語
「あ、やっと来たぁ!!」
司令室の前で兄さんが手を振っていた。
「あら?先に入っててもよかったのに」
「だって新しい仲間とはみんなで一緒に初対面したいじゃん!
だからボク、みんなのこと待ってたんだよ!…あれ?ウィルくんは?」
兄さんは李苡が引きずってる瀕死状態のウィルに気がついた。
「リリィちゃん喜びすぎだよ〜!ウィルくん大変なことになっちゃってるよ〜」
「そうね〜!ちょっとはしゃぎすぎちゃったかしら〜」
そして微笑ましく笑う李苡と兄さん。
…ここまでくるとさすがに俺でも少しウィルが可哀相に思えてきた。
「じゃあみんな揃ったし、早く中に入ろうよ!!」
「誰が移動してきたのかしら?戦力になる奴だったらいいわね」
そして司令室の扉を開けた。
司令官はどうやら留守のようだ。部屋の中には一人の姿しか見当たらない。
恐らくあれが回復役の奴であろうと思われる長身の…あれは……女…?
いや、しかし身長があるな…と言っても俺とあまり変わらないか…
顔はどう見ても女なんだが…体格が少し男っぽいか…?
「こんにちは!回復役としてS隊に移動してきました、夢幻です!
司令官は先程急用が入ってしまって留守にされていますが、こちらに待機しているよう
指示がありましたので…あ!リリィさんじゃないですか!!」
声も中性的でますます性別の見分けがつかなくなった。
しかしその笑った顔が女にしか見えない。男っぽさを微塵も感じない。
…ということはやはりこいつは女なのか?
「回復役ってアンタだったのね、まぁこれからヨロシク」
「いつもお世話になってます!あの〜、ところで今日師匠は…?」
「ああ、コレ?」
「うわあぁぁっ!?師匠ぉぉっ!!?」
夢幻という奴は、見るも無残な姿になってしまったウィルを発見して慌てふためいた。
「待っててください!“願い事”!!」
祈るような格好でそう唱えると、技により発生した光がウィルを癒していった。
それにしてもやはり回復系の技とは便利なものだな…
「ここは…?戻ってこれたのか…俺は…?」
「師匠っ!生きてますか!?」
「花畑が…広がってたんだ……空はキレイで…争いのない…平和な楽園が……」
「師匠!それは多分天国の入り口付近かと思われます!!」
「フッ…実はもうあそこには何度も行ってるから顔見知りが結構いるんだぜ…」
「さすが師匠!!天国に顔見知りがいるなんて…それでこそ真の男なのですね!!!」
「…李苡、あいつら何なんだ?」
「師弟関係らしいわよ、確か男らしさを学ぶとかなんとかって」
「男らしさを学ぶ…ということは夢幻は男なのか…っ!?」
「私も最初に夢幻と会った時驚いたわよ。まさかあの顔で男とは…
でもまぁアンタが女だって知った時ほど衝撃的ではなかったけどね」
俺みたいな女もいれば夢幻みたいな男もいるってことか…
これからは迂闊に見た目だけで性別を判断できないな。
「夢幻くん!はじめまして、ボクは仮入隊中のサニーです!!」
「あ、はじめまして!夢幻と申します!!」
「そうそう、ボクこう見えても一応男の子だから!男子寮でもよろしくね!」
「そうなんですか!?師匠とよく一緒にいるからてっきり師匠の彼女さんかと…」
「あはは!ウィルくんの彼女だってぇ!!絶対ありえないね♪
というかまずウィルくんに彼女ができるとか、そこからしてもうありえないから☆」
「…サニー、最近お前まで俺イジメがブームなのか……?」
確かに兄さんも最近ウィルをからかって遊んでいるようだ。
…ウィルが可哀相だとは思うが、兄さんが楽しいならそれでいい。
「あの、はじめまして。貴方も仮入隊中の方ですよね?」
夢幻が声をかけてきた。
…どうもこういうのは苦手だ…初対面の奴に挨拶とはどうすればいいのか……
「あ…!貴方…もしかして…っ!!」
俺の顔を見た夢幻は急にハッとした表情となり、ピクリとも動かずに
ただひたすら俺の顔を見つめていた。
…これも挨拶の一種なのだろうか?
よく分からないのでとりあえず俺も目を逸らさずに動きを止めてみた。
「やっと…見つけた……」
すると今度は女のような大きな目から涙を流し始めた。
ちょっと待てこれは挨拶ではなさそうだ。
俺がこいつに何かしたか?気づかないうちに何かしたのか俺?
というかこの場合はどうすればいいんだ?
なんか動いてはいけないような気がするので俺はそのまま動かずにいた。
「ずっと前から…貴女のことが………好きでした……!」