本当に私…どうなっちゃうんだろう…
暗闇の中で一人
溢れてくるのは涙ばかりで
自分の無力さを責めるしかない
自分のことなのに、自分じゃどうにもできないなんて
そんなことを思っても
溢れてくるのは涙ばかりで…
月と太陽の物語
怖い…
私…ホントにここで死んじゃうのかな…?
どうせならもっとやりたいことやっておけばよかったな…
読みかけの本も全部読んでおけばよかった
まだ見てない映画も見ておけばよかった
もっと人の役に立つように生きればよかった
そういえば私、毎日仕事ばっかりでやりたいことは全部後回しだったな…
仕事は好きだけど、もっと沢山いろんなことやりたかったって今になって思うよ…
私は…どうやって生きればよかったんだろう…?
そんなこと…今更考えても遅いよね
だって…もう私は…
バンッ!!
「!?」
え…!?何…誰か来た…
きっとクレド軍の人が私を殺しに来たのね…
いつか出会うはずだった私の夢の王子様
一目会いたかったけど…願いは叶わないようです…
『こんにちは』も言えなかったけど、もう『さようなら』です…
さようなら…まだ見たこともない…私の王子様
「大丈夫か?」
…え?
「お前がアリスだな?安心しろ、俺はグロリア軍の者だ。お前を助けに来た」
まさか…王子…様…?
「…怖かっただろう、こんな暗闇に一人…身動きを封じられて……」
黒髪で…真っ赤な瞳の……背の高い…王子様…
「今その鎖も外してやるからな」
「あの…!」
口に巻かれた布がなくなり、私はやっと言葉を発することができた。
「なんだ?」
「貴方のお名前は…!?」
「…ルナだ」
「ルナ…様……」
無表情だけど…ちゃんと伝わってくる優しさ…
私の…憧れの王子様…
王子様…ルナ様は私の足枷と、技無効化リングを外してくださってから、何かを探すように周りを見回した。
「尋ねたいことがあるんだが、兄さん…いや、色違いのニューラ人型を見なかったか…?」
「色違いのニューラ人型…ですか?私は見ていないのですが…」
そういえばあの不気味なアーボックの女の人が色違いのニューラがどうとかって言ってた…
「で、でも…この計画の主犯らしきアーボック人型の女の人が話しているのを聞きました…!
多分今はその女の人といると思います…!」
「そうか…!お前はこの騒ぎが収まるまでどこか見つからない場所に隠れていろ。
本当はすぐにでも安全な場所へと逃がしてやりたいのだが、あいにくこっちも三人で戦っている…
お前一人では危険だが俺と行動するほうが危険だからな…」
ルナ様達はこれを誘拐事件として依頼を受けたわけじゃないから準備が不十分なのね…
しかもルナ様の味方のお一人が捕まってしまったらしいし…
「あの…!私、種族はミミロップなんです!だから耳がいいのでそのアーボックの人の声を探して
今捕まっているお仲間の場所を探すことができます…!だから私も…」
「駄目だ。確かにその方法は効率がいい…しかしそれではお前が危険だ。
それにお前は足を怪我しているではないか…すまんが俺は回復系の技は使えないし、薬なども持ち合わせていない…
しかも今のメンバーの中では治癒専門の奴がいないのでそれ以上大怪我をしてしまったら対処ができない…」
足の怪我…あのアーボックの人に切りつけられたところだ…
今までずっと恐怖のせいで全然気づかなかったけど…今になって痛みがジンジンと伝わってくる
「大丈夫です!こんなこともあろうかと非常用の傷薬があります!私の怪我程度ならこの薬で十分ですし…
それに、実は私も護身用にと戦闘を学んでいるので少しはお役に立てると思います…っ!!」
「………」
そうよ、逃げてばっかじゃ何も変わらないじゃない…!
自分のことを助けてあげられないままの私なんかでいたくない!
それに、絶望と恐怖の中から救ってくれたルナ様のお役に立ちたいの…!!
どんなに危険なことであっても…!
「アリスは…本当にそれでいいのか…?」
「はい!」
「お前をこんな目に遭わせた奴らと戦うんだぞ…?それがどんなに危険な事かは身をもって分かっているはず…」
「分かってます!」
「怖く…ないのか…?」
「怖くない…って言ったら嘘になります…本当はすごく怖いです…
でも…だからって逃げ隠れしてはいけないと思います…!このまま私だけが何も出来ないなんて…嫌です…!
今回のことで私…色々知りました。私はいつも逃げてばかりだったんだなって…
何も出来ないのを全部仕事のせいにしていて…私は臆病だから…自分がやりたいこともできずに
ただ逃げて…逃げて……結局、道に迷っていたんです…自分がやりたいことすらも…見失っていた…」
「………」
そう、私は逃げていた
何も出来ないんじゃなくて、何もやろうとしなかったんだ
言い訳ばかり探して、好きだった歌の仕事でさえも言い訳に使ってしまった
なんでだろう
大好きな歌が歌える仕事をしているのに
いつから…私は歌を『仕事』としか見なくなってしまったのだろう
ただ言われた通りに歌って
マニュアル通りの笑顔で手を振って
私は…何がやりたかったんだろう…?
「私は…何も出来ないんじゃなくて…何もやらなかったんです……
自分の意思で何かをするのが…怖かったんです…。それが間違っていたらとか…そういうことばかり考えて
結局は自分が傷つきたくないだけで…何かをする勇気がなかったんです…でも…」
今は違う
はっきりと分かるの…私が自分から強く願うこと
「今は自らの意思でルナ様の役に立ちたいと思うんです…!!」
今までにないくらい…自分の心の声が聞こえる
今なら自分と向き合うことができる
「お願いします…っ!!」
「………」
ルナ様は黙って私を見つめていた
「………わかった、お前を連れていこう…」
「…っ!ありがとうございます!!」
「…お前が言いたいことはよく分かった。お前とは少し違うが…俺も似たようなものだ…」
「ルナ様…?」
ルナ様の瞳がわずかに沈んだように見えたのは、私の見間違いかな…?
だけどすぐにあのキッとした、強く前を見つめる瞳が戻ってきた。
「それでは、行くぞ!」
「ハイッ!!」
頑張らなくちゃ!
絶対にルナ様の足手纏いにだけはなりたくないから…!!