それからルナは、サニーの『力』のこと
封印されていた過去
自分が今まで何をしてきたか
何のためにグロリア軍に入隊希望をしているのか…
まだ喋ることに慣れていないながらも
言葉を捜しながら李苡やウィルにそのことを伝えた
それだけでもルナの中では大きな変化だった
月と太陽の物語
「サニーにそんな力があったなんて…」
李苡やウィルも、あのサニーにそんな強大な力が秘められていることに驚いた。
それにあんなに明るいのにほんの二年前まで封印されていたという事実にも衝撃を受けた。
「だからあの時も…」
李苡は、クレド軍の罠にはまって戦闘になった時のサニーの言葉を思い出した。
『で…でもボク…ちょっと理由があって…あんまり力が出せないから…戦いも長くはできないし…』
そしてその言葉の意味もようやく理解できた。
それは李苡が考えていたものよりもはるかに深刻な理由だったことにも…
「サニーはいつ『力』が暴走するか分からない状況にいるのね…
そしてその『力』は戦闘か何かの拍子に暴走する可能性があるから戦えない…」
「そうだ。だから俺は兄さんの代わりに戦っている」
「だけど軍に入隊する以上、サニーはこれからも戦いの中に身を投じることになるのよ?
これから先、サニーは危ない目に遭うことにも…」
「分かっている…しかしまとまった勢力の中にいなければ兄さんはもっと危険だったんだ…。
だが軍に入るということは、戦いは避けられないということ…どっちにしろ選択の余地はなかった…」
「えっと…つまり、サニーは大きい『力』を持っていて、その『力』を狙ってるのがクレド軍の奴らで、
そのクレド軍に対抗するためにグロリア軍に入った…っていうことなのか?」
ウィルは頭を抱えながら、とりあえず理解した部分を簡潔にまとめた。
「とにかくクレド軍がサニーを狙っている訳は分かったわ…
そして今そのクレド軍に捕まってしまった…これは大変なことになったわよ…!」
「早く行かなければ…!!」
「その前に…こんなリングされたままじゃ身動きできないわよ。バカ恐竜!アンタの出番よ!」
「おうよ!少し熱いかもしれないが我慢してくれよ!」
そう言うとウィルは李苡とルナの後ろに回りこみ、背中側の腕の手枷目掛けて火を吹いた。
するとその技無効効果を持つ特殊な手枷はいとも簡単に外れてしまった。
「こーゆー時に便利よねぇ、技発動しなくても火吹ける奴は」
その手枷は技無効効果を持つが、ウィルの異型特有の『技』はこの無効効果の影響を受けないのだ。
「さて、邪魔な手枷が取れて自由になったところで、早速サニーとアリスを助けに行くわよ!」
「おいちょっと待てっ!俺の手枷も取ってくれよ!!自分じゃ背中側向いて火吹けないんだからっ!!」
「しょうがないわね〜、ホラ後ろ向きなさい」
「なんだよしょうがないって…」
ウィルはチクショウこの恩知らずと思いながらも後ろを向いて手枷を李苡に向けた。
「マジカルリーフ!!」
「うおっ!?おい!少し手切れたぞっ!?」
「うるさいわね!さっきのアンタの炎だって実はすごく熱かったのよ!?
まったく…こっちは草タイプでルナだって氷タイプなんだから炎タイプの常識で温度調節しないでほしいわ」
「少しくらい熱いのは我慢しろっつっただろ!!」
「少しなら我慢したわよ!『少し』ならねっ!!」
「どうでもいいから早く行こう…」
また始まってしまった李苡とウィルの喧嘩に終止符を打ったのは意外にもルナの冷静な一言であった。
「あ、あら、そうね…!こんなことで時間くってる暇はないのよバカ恐竜!!」
「そうだった!!よしっ!気合入れなおして行くぞ!!」
「と、その前にこの状況を本部に連絡して援軍を…って、あら?」
李苡はあちこちを捜すが携帯電話は見つからない。
「クレド軍の奴らに盗られたんだろうな、俺らが寝てる間にでも」
「ということは…ホントにこの場は私達だけで乗り切らなきゃいけない…ってことね」
「平気へーき!見たところそんなに大きいアジトではなさそうだし、多分すぐにアリスとサニーも
見つかると思うぞ!そしたら俺の翼で飛んで脱出すりゃあなんとかなるだろ!」
「そんなにうまくいくかしらね…そもそもアンタが四人乗せて飛べるかどうか」
「四人くらい軽い軽い!!とにかく、サニーとアリスを見つけることを最優先に動いた方がいいな!」
「…そうね、今はそれしかないわ。とりあえず手分けして捜しましょう」
「敵が出たらどうする!?戦っていいのか!?」
「好きにしなさい…」
戦えることにワクワクしているバカを見て李苡は溜息をついた
そんな頃
クレド軍の上層部にも『力』を持ったニューラを捕獲したという連絡が入った
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「もしもーし?」
『ご機嫌麗しゅうございます、アスタリスク様。こちら紫苑でございます』
「紫苑?あー、ハイハイ。で、何なの?なんか面白いことでもあるワケ?」
『はい、それはもう…アスタリスク様ならきっとお喜びになられますわ』
「え!?何!?つかさー最近超ヒマで退屈だったんだよねー!!」
『先程、例の『力』を持つ色違いのニューラを捕獲いたしました…』
「マジでマジで!?スゲェじゃん!それ超ヤバイってマジ!!」
『お褒めに頂き光栄ですわ』
「なんか面白そうだなそっち!久々に現実世界に出てみるのも悪くねーかなー!
デジタル世界も壊し甲斐のあるデータねーし…現実世界で壊し甲斐のあるやつでも探してみっか」
ヴォン……ビ…ビビ…
現実世界にいきなりデータが書き連ねられたものが浮かび上がり、そこにプログラムが徐々に組み込まれ
見る見るうちにそのプログラムは実体化し、完全な『実在するプログラム』が現れた。
「あ、アスタリスク〜!『こっちの世界』じゃ久しぶりじゃない?最近ずっと『そっちの世界』にいるからさぁ。
それで、わざわざこっちに来た理由もあるんでしょ?何かあったの?」
そのアスタリスクと呼ばれる者の他にも上層部と思われる者の声が響いた。
まるで子供のように無邪気で明るい声…いや、子供のように、ではなく本当に子供の声だ。
「なんかこっちで面白いことがあったらしいからちょっと行ってくるわ。
つまんなかったらとりあえず連絡してきた奴のこと壊して遊んでくるしー、暇潰しにはなりそうじゃん?」
「ええ〜!いいないいなぁ、僕も行きたいよぉ〜!」
「これはオレのゲームだからダメ〜!」
「ぶぅ〜アスタリスクのケチ〜!いいもん、そこら辺の人間狩って遊んでくるから〜!」
「そんじゃ、オレはちょっくら行ってきまーす」
そうしてその『実在するプログラム』は連絡を受けた場所へと向かっていった…