その後、ルナは李苡やウィルと合流した
そしてアリスの協力を得て、
サニーが捕まっていると思われる部屋の前まで辿りついた
しかしその一方で
最も恐ろしいプログラムもその場所に辿り着きつつあった
月と太陽の物語
「ここか…」
ルナ達はこれから始まる決戦を前に、心を落ち着かせていた。
「敵はかなりの人数がいると見て間違いないわ…」
「はい…扉の向こうから沢山の声や音が聞こえます…」
アリスのミミロップ特有の聴力は目的地を探すのにも、見えない場所の状況把握にも
とても役に立ち、この場所に辿り着くにも最小限の戦闘しかせずにすんだ。
そのおかげで体力の温存もでき、充分に戦える状態にある。
しかしまだ北の森での戦闘の疲れが多少残っており、万全の状態とは言い難い…。
「いやぁ!それにしてもアリスも無事で良かったな!しかもすごく頼りになるし!!」
「私…役に立ててるかな…?」
「勿論!アリスのおかげで目的地にもすぐ着いたし、無駄な体力も使わずにすんだし!
それになんと言ってもこのS隊が一気に華やかになったぜ…!
アリスが来る前はヒステリックで目つきの悪い女と、漆黒のイケメン君しかいなかったからな…」
「決戦前で無駄な体力使いたくないから今回は何も言わないけど、
任務が終わったら覚悟しとけ…バカ恐竜よ……っ!」
李苡はギロリとウィルを睨みつけ、今にも殴りかかりそうなオーラを出していた…。
「あ…はは…や、やめろよ…あ、アリスが怖がるだろ…う…っ」
と言いながら怖がっているのはウィルだけである。
「…そろそろ突入するのか?」
ルナが静かに言った。
兄であるサニーが捕らわれているのにこんな冷静でいられるのは自分でも不思議に思う。
多分昔の自分だったら、パニックになり自分自身ですらも見失っていたに違いない。
そしてまた、兄を助けることもできずに危険な行動ばかりをするだろう…。
しかし今はすごく落ち着いているし、冷静に物の判断をすることもできる。
それに、こんな圧倒的不利な状況にいても何故だか兄を確実に助けられる気がする。
それは、多分仲間のおかげなのだろうとルナは思った。
今までと違い、何もかもを一人で背負っているわけではないと知ったときから
ルナの心は徐々に解放されていった。
しかしまだ、昔と変われていない自分もいた。
それをこれから少しずつ、李苡と約束した通りに変えていかなければならない…
だが今は、共に戦ってくれる仲間がいるということだけで、ルナの心には大きな支えとなっている。
「…皆、ちょっと聞いて。正直言って、私達だけで敵と戦っても勝てる確率は0に近いわ…。
だけど、絶対にサニーは助け出すわよ。どんなことがあっても…ね!」
「あったり前だぜ!サニーは俺達S隊の仲間だ!仲間ってのは、命を懸けても守るものだからな!!」
「…ありがとう……李苡、ウィル…」
今までずっと一人で戦ってきて、これからも一人だと思っていたのに
どんなに冷たくしても、どんなに傷つけても、決して自分を見捨てないでいてくれた
本当に…一人じゃないって……安心してもいいって…思えた……
信じられないけど…もし、これが夢でも…信じていたい……
自分は やっと 居場所を見つけられた
「ルナ様!私も…精一杯頑張ります!頑張って…私の命の恩人であるS隊の方に恩返し致します!!」
「アリスも……ありがとう…本当に…皆……」
「お礼を言うのはサニーを助けた後でしょ!何もう感動モードに入ってるのよ!」
「李苡…」
「ほら、今にも泣きそうな顔すんじゃないわよ!全く…まだまだ子供なんだから…」
そう言って、李苡はフッと優しい顔で笑った。
「そうよね、アンタこう見えてもまだ18歳か…。今まで、本当によく一人で頑張ったわね…
でも、これからは私達もいるから…一人じゃないから、もう大丈夫」
ルナはその李苡の優しい声と微笑みに、もういない母の面影を感じた。
気を抜いたら涙が溢れてきそうで、それを必死に耐えた。
次の一呼吸を置いて、またいつもの力強く美しい女戦士の顔に戻った李苡が言葉を続ける。
「さて、泣くのはまだまだ早いわよ!サニーを助けましょ!皆でね!!」
李苡の言葉に皆で視線を合わせて頷いた。