僕は いつも守られてばかり
せめて、貴女が想いを伝える前に
一度でいいから 僕が守ってあげたかった
月と太陽の物語
空からは懐かしい、桜の花びらがひらひらと降ってくる…
僕より少し離れた場所では既にルナさんの戦闘が始まっているようです。
「綺羅はああ見えてもかなり素早い。勝敗がつくのも一瞬だろう…」
「確かに、綺羅さんの素早さは麗も褒めていましたからね。
でもルナさんだって驚くほど速いんですよ?きっといい勝負になります」
僕は少しだけ微笑んでみせました。
「僕は貴方に負けるわけにはいかない。負けてしまったら…僕がここにいる意味がない」
負けてしまったら、それこそ僕はルナさんを想う資格すら無くなってしまう。
最後くらいは 男らしい姿で 貴女の幸せを見届けたい
「いきますよ…!」
僕は両手に力を集中させ、攻撃を放った。
「“マジカルリーフ”!!」
雅さんは薙刀の構えを変え、追跡する植物を受け止める体勢になった。
「“炎の牙”!」
技名を唱えると薙刀の刃の部分が燃え盛り、舞うように武器を振るい
僕の放った攻撃を全て打ち消してしまった…!
「負けられぬ理由、それは我にもある。
他の奴には理解出来ないだろうが…麗様は我の中で絶対の存在なのだ。
だから、あの御方の命令は我が命に代えても守らなければならないっ…!」
攻撃態勢になった雅さんは薙刀を構え、僕のすぐ近くに移動してきた。
「はぁっ!!」
優雅に振るうが威力は凄まじいもの…!
華奢な体つきに似合わずパワータイプなので一回の攻撃の威力が恐ろしい…
「まだまだっ!」
「…っ!“リフレクター”!!」
リフレクターを発動して何とか防ぎますが…連続で繰り出される攻撃をいつまで耐えられるか…!
「“炎の牙”っ!!」
燃え盛る刃の強烈な一撃でリフレクターは破壊され、攻撃は直接僕を襲った。
「く…あっ…!!!」
信じられないほどの痛みと衝撃が体中を駆け巡る。
そのまま僕の体は地面に強く打ち付けられ、一瞬視界が赤く染まった。
攻撃を受けた箇所は背中で、炎による火傷も負ったようだ…
そこから伝わる激しい熱と痛みは更に僕の体力を削っていく。
「一気に片を付ける!!“ギガインパクト”!!!」
雅さんの持ち技の中で最も凄まじい破壊力を誇る衝撃波が僕に向かって放たれた。
この攻撃を受けたらただでは済まないでしょう…
しかし避けようにも体が思うように動きません、火傷のダメージも相当です…
でも 絶対に負けられない
「“身代わり”…!!」
既に残り少ない体力を削り、身代わりの技を発動させた。
「なっ…!み、身代わり…っ!?」
身代わりのおかげで僕はギガインパクトを逃れることができた。
雅さんは強烈な技を放った反動で一時的に動きが停止している…まさにこれがラストチャンス…!!
「“―――――――…”!」
小さな声で僕は最後の切り札である技名を唱えた。
「我が動けぬうちに攻撃をしておくのだったな…!!」
反動が収まった雅さんは、再び攻撃の体勢をとる。
「一度攻撃を当てたくらいでは貴方は倒せません。
だから僕はラストチャンスに大きな賭けをしました、言うなれば大博打ですね」
「博打…だと…?」
僕も攻撃の体勢を整え、にこりと微笑みました。
「男なら、大博打を打って勝て。僕の師匠のお言葉です」
体力は残り僅か…さて、僕はこの賭け事に勝つことができるのだろうか…!
「何だかよく分からないが容赦はせぬぞっ!“氷の牙”!!」
「“フラッシュ”!」
「くっ…!目眩ましか…っ」
目を開けられないほどの眩い光で姿を消し、攻撃を避ける。
「“トリックルーム”」
僕が技名を唱えると、雅さんは早速自分の体の異変に気づいたようです。
「か…体が重い…っ!?」
「これは速い人は遅くなり、遅い人は速くなるという変化系の技です。
貴方はしばらくの間、僕よりも速く動くことはできません」
「なんだと…っ!」
これで僕は何とか雅さんより素早く行動することができる…!
すかさず手のひらに力を集中させ、攻撃系の技を放った。
「“サイコキネシス”!!」
「っっ!!!」
体の重みにまだ慣れていない雅さんは攻撃を避けられず、それなりのダメージをくらったようです。
しかしこれだけでは決定打には遠く及ばず、雅さんはすぐに体勢を持ち直しました。
「この程度の変化で我を倒せると思ったら大間違いだっ!“ラスターカノン”!!」
「くっ…!!」
放たれた攻撃を避けきれず、右足に命中してしまった。
もう少し… あと、五秒…っ!
「逃しはせん!“雷の牙”っ!!」
「うわああぁぁぁっっ!!!」
右足の不自由で動けなかった僕に容赦ない攻撃が襲い掛かる。
電撃は体を貫通するような痛みで、僕の動きを完全に封じ込めた。
あと…四秒……
しかし僕の体はもう限界だった。あと一回でも攻撃をくらったら確実に僕の負けです。
先程の電撃のショックと火傷のダメージ、右足の損傷で体は全く動かない…
「これで…終わりだっ!!!」
3… 2…… 1……… ――――――… !
「なっ…!?そ…そん…な…っ!」
最後の攻撃を放とうとした雅さんの…無防備な背後へ巨大なエネルギー球が直撃した。
「“未来予知”…賭けは僕の勝ちです」
「う…ああぁ…っ!!!」
あの時唱えた最後の切り札、それは“未来予知”…
限られた時間内で雅さんを確実に倒すには
無防備な場所に威力の高い技を命中させなければならなかった。
どうやら…大博打に勝てたようです…
「我は…我は負けるわけには…いかぬ…のだ……っ」
雅さんはその言葉を最後に、ぱたりと気を失ってしまいました。