俺は、また光の中で生きていけるのか?
また、笑ってもいいのか…?
『運命共同体』
ありがとう
そう言ってくれて
本当にありがとう…
―――…ありがとう…―――
月と太陽の物語
テレポートによって俺達は、あの戦場からグロリア軍の基地へと帰ってきた。
今まで死に物狂いで戦っていた場所からいきなり平和な日常風景にと変わるものだから
頭の方がついていかない…。
どうやらウィルや李苡も同じようで、何か違和感のようなものを感じているのだろう。
「なんか…変な感じだなぁ…」
「ホント便利ね…テレポートってのは……」
そのテレポートを使った当の本人も何かフラついている。
…もしかして自分の技に酔った…とか?
「麗君、またテレポート酔いですか?」
「うっ……拙者…これだから空間転移は…好かぬ……っ」
「プッ…!ホントに何回見ても…くくっ…!面白いですね、自分の技で酔ってる麗君…クククッ…!」
「月詠…貴様っ…!本当に性格悪いぞ…っ!!」
「あはっ☆ありがとうございます☆」
案の定、本当に自分の技で酔っているみたいだ。
そしてそれをからかう月詠の表情はすごく活き活きとしていて楽しそうだ。
サムライの男は何か言い返したそうに月詠を睨んでいる。
しかしその悔しそうな視線を見てはまたニッコリと微笑む月詠。
……本当に性格が悪いな…
「拙者は任務も完了したので退散させてもらう…!」
「あれ?もう帰っちゃうのですか?こんなに素敵な女性が三人もいるのに?」
「さらば!!」
麗という男は月詠を無視してさっさと帰ってしまった。
少々怒り気味の麗を本当に楽しそうな笑顔で月詠は見送っていた。
…二度目だが、この男は本当に性格が捻じ曲がっている…
「さて、麗君も帰ってしまいましたし…私達も報告書やら何やらの後始末でもしますかね」
「あーんもうっ!月詠ちゃんが麗ちゃんを苛めるからじゃなぁい!
可哀相に私の麗ちゃん…でもやっぱり怒った麗ちゃんのお顔も美しくてス・テ・キ…」
「麗はいつから水霧のモノになったのぉ?」
「You、あまり突っ込まない方が良いデスよ」
「はは、みんなまだまだ元気だね。僕はもうお腹が減って動けないよ」
あんな戦いの後だと言うのに、A隊の奴らは全然疲れている様子は無い。
あの戦闘力に加え、この恐ろしいほどの体力…何なんだこいつらは…。
「アリスさんも家までお送りします。では、行きましょうか」
「待ってください!」
「どうかされましたか?」
「あ、あの…!!私も…私もグロリア軍に入隊を希望します!!」
アリスの思いがけない一言に、一同が静まり返った。
そしてその沈黙を破ったのはやはりとでも言うべきか、ウィルの発言であった。
「ええぇーっ!?ア、アリスがグロリア軍に入隊希望ーっ!?」
「もちろん、アイドルの仕事も辞めます…!これからは戦闘もしっかり学びます!!」
「で、でも何でそんな急にっ!?」
「…私、今回の事件で色々と考えさせられたんです…。誘拐されて『死』を目の前にして思ったんです…
私は今まで誰かのために何をしてあげられたんだろう…誰かのためになることを、
どのくらいしてあげられたんだろう……私が本当にしたいことって…何なんだろうって…」
そういえば、アリスは前にも俺にこんな話をしてくれたな…
自分は逃げてばかりで、こんな自分を変えたいと…強い目で訴えてきた。
その時に俺は心の奥でこう思った、『自分によく似てる…だけどこいつの方が強い…俺なんかよりも…』と。
俺も、自分を変えたいと思っていた。しかし、思っているだけだった。
アリスのように勇気を振り絞って行動に出たわけでもなく、ただ、思っているだけだった。
こんなではいつまでも自分は変われないと分かっていても、行動出来なかった…
でも、李苡やウィルが、最後まで俺を見捨てないでくれたから、今の俺がここにいる。
戦いの時にウィルが俺のことを恐れないで『仲間』だと笑って言ってくれたから、
周りを全く見ていない俺を、李苡が本気で叱ってくれたから、
俺はやっと…変わる勇気を見つけられた。やっと…光を見つけられた……
「変わりたいんです、弱虫な自分から…もう逃げたくないし、仕事を言い訳にもしたくない…
私にも…誰かのために何か出来ることがあるなら、それを全力でやってみたいと思ったんです!」
やはり、アリスは強い…。
自分から変わる努力をしている…俺も、見習わなくちゃな。
「そうですか、そういうことなら大歓迎ですよ」
月詠は優しく微笑んでアリスにそう告げた。
その時、アリスは嬉しさのあまりに涙を流し歓喜の声を上げた。
「今すぐにでも仮入隊の登録手続きは行えますが…どうしますか?
家に帰ってゆっくりと休養してからでも遅くはないですし、もう少しよく考えてからでも…」
「いいえ!今日できることは今日のうちに!それに、考えても考えても結局答えは同じだから!!」
「フフ、元気が良いですね。分かりました、では登録手続きを行いましょうか」
そう言ってA隊とアリスは手続きと報告書などの処理のために事務室へと向かった。
ふと、アリスが俺らの方に振り向いて言った。
「今回は本当にありがとうございました!!これからは仲間としてよろしくお願いしますね!!」
そして眩しいくらいの笑顔で笑ってみせて、走り去っていった。
「やっぱり可愛いなぁ…アリスは…」
「アンタには釣り合わないからやめときなさい」
「な…なんだとっ!!…でもまぁ確かにアイドルとじゃあちょっと無理かなぁ…」
李苡の言葉にガックリとうな垂れるウィル。
こんな光景を見てやっと任務が終わったんだなと実感し、今更疲労がどっとくる。
「フフフ…」
「どうしました?兄さん」
「なんかね、今すごく安心したの」
「安心…ですか?」
「うん、どうしてだろう…ずっと前からここにいたような気がするんだ。
それでね、やっと『帰ってきた』って思ったの。それって、やっとボク達の居場所を
見つけられたってことだよね。だから『帰ってきた』なんて思えるんだよね!
それが…今すごく嬉しくて、すごく幸せなんだ…!」
そう言って兄さんは本当に幸せそうに微笑んだ。
以前はただ喧しいとしか思わなかった李苡とウィルの口喧嘩も、今ではすごく安心するものとなっていた。
抜け出したくてたまらなかったグロリア軍の基地も、今となっては『帰る場所』となっていた。
無意識のうちに、いつの間にか俺も『帰ってきた』という感覚になっていた。
何年ぶりだろう…『帰ってきた』なんて思えたのは……
帰る場所もなかった俺と兄さんに、やっと帰る場所ができたのか…
これが…『幸せ』という感情なのだろうか
「あ…ルナちゃんが…っ!」
「ルナ…アンタ…!」
「おおっ!ルナ!!」
なんだよ、そんなに驚くことでもないだろう
「ルナちゃんが…笑ってくれた……!!」
笑い方なんて、忘れたと思っていた
笑うことなんて、もう二度とないと思っていた
「うまく、笑えてるかな…?」
ちゃんと、笑えていたら いいな
第一章
『運命共同体』
完結
物語は第二章へと続いていく…