暗くて 静かで
何もない 誰もいない
見えるのは自分を束縛する鎖と呪符
自分は封印されているんだ
みんなと色が違うから
恐ろしい力を持っているから
いつからだったかな…
こうやって暗い部屋でずっと膝を抱え込んで
たまに聞こえてくる自分の中の自分じゃない声に耳を澄まして
『ごめんね、キミは何も悪くないのに』
『ごめんね、悪いのは全部僕なのに』
『ごめんね、ごめんね、ごめんね…』
心に響く自分の中の誰かの声
ずっと謝っている
キミは誰なの?
どうしてボクに謝るの?
泣かないで
ねぇ、泣かないで
もう誰かが泣いている姿は見たくないんだ
お母さんも、お父さんも、ボクの双子の妹も
あの雪の日
ボクが封印された日
みんな泣いていた
『やめて…!この子は何も悪くない!!
この子は誰よりも心優しい私達の太陽なの…!』
(本当は産まれてすぐ封印するべきだったはずの忌み子を貴様らは…)
『力が暴走してしまったのはお前等が無理矢理この子に術をかけたからだろう!!
お前等は災害などが起きると全部この子のせいにする!!
早く封印しないからだとか言って…!お前等の目的はこの子の力を暴走させて
封印する理由付けにすることだったのだろう!!』
(見ただろう?あの力を…もはや怪物だ…悪魔だ)
『この子は怪物でも悪魔でもない!!』
『そうだ!闇に心を売ったお前達のが俺には悪魔のように見える!!』
(忌み子の両親は処刑だ、早くその悪魔を封印しろ)
お母さん、お父さん、ごめんね…ボクのせいで…
いっぱい愛してくれたのに…こんなことしかできないボクは
本当に悪魔だね…
『お兄ちゃん…!!』
(忌み子の妹はどうするか)
(そいつは通常だ、封印するまでもない。放っておけ)
(両親も処刑され拠り所もない、どうせすぐに野垂れ死にするだろう)
『お兄ちゃん…行かないで…!』
泣かないで
大好きなキミ
逃げて
どこか遠くへ
ボクに関わっちゃダメだよ
今キミは自由だ
早く…自由なうちに逃げて…
ボクから逃げて
あの日から…もうどのくらいが経ったのだろう
こんな部屋に居ては時間が止まっているとしか思えない
それでも、確実に時は流れている
ボクの大好きな妹は
遠くへ逃げられたのだろうか…
もうボクに関わらずに済むところまで
やっと来た
僕の、そしてキミの片割れが
ずっと待っていた
僕の勇敢なナイト
僕達を守ってくれるための存在
さぁ、『終わり』が始まるよ
「!?」
いつもより強くその声が響いた
聞こえてくるのは謝るような言葉ではなかった
終わりが近づいているよ
そして始まるよ、終わりへの道が
その時、静かな空間に衝撃がやってきた
音を聞いたのは何年ぶりだろう
暗い部屋に光が射した
眩しいと最後に思ったのはいつだったろう
永遠に止まったままだと思っていた時間が動き出した
それが『終わらせる』ための『始まり』だった
「兄さん!!」
その空間と時間を壊してボクのことを呼ぶのは
「ルナ…ちゃん…?」
ボクの大好きな妹
最後に見た時とは全然違っていた
長かった黒髪は短くなって
ボクより小さかった身長はもうボクを抜かしていた
少し、お父さんに似ていた
外では永い歳月が経っていたのだと今更実感する
「覚えていてくれたのですね…サニー兄さん…」
「髪の毛…切っちゃったんだね…」
「はい…」
「でも似合ってるよ…」
もう忘れそうになっていた温もりを
長い歳月を経て
やっと抱きしめることができた
「大きくなったね…」
「もう…あれから八年が経ちました…」
「八年…そう、そんなに経ってたんだ…」
「もっと早く助けに来られなくてすみませんでした…
あの頃の俺は無力で何もできなかった…
だから強くなって…これからは兄さんを守ります…!」
ありがとう
忘れないでいてくれて
でも、ダメだよ
逃げて
ボクから逃げて
「ルナちゃん…ありがとう…。でも、ボクはこのままでいいんだ」
「兄さん…!?」
「ボクの力…自分ではコントロールできないから
いつ暴走するか分からないんだ…」
「だったら何か方法を探しましょう!とにかくここから逃げなければ…!」
「ダメだよ…方法なんかないんだ…お父さんもお母さんも必死で探してくれたけど…」
「諦めてはいけません!絶対に何かあるはずです!!」
「もう…人を傷つけてしまうのは嫌なんだ…。
ボクと一緒に居たらきっとボクはキミを傷つける…
ルナちゃんだけは…絶対に傷つけたくないのに」
だから逃げて
ボクから逃げて
「いいです!俺ならいくら傷ついても!!兄さんはそれ以上に傷ついてきた!!」
「…ダメ、ボクはここに居た方がみんなのためになる…
封印されてれば力も暴走しない…
みんなを傷つけずに済む…だから、ボクから逃げて…」
それでもキミは強くボクを抱きしめてくれた
「生きることを投げ出さないで…!ちゃんと生きようとしてくれよ…!!」
どうしてだろう
今更
涙が溢れてくる
止まらない
ずっと封印されていた心が動き出した
ボクはまだ涙を流せるんだ
「ありがとう…ルナちゃん…」
ありがとう
一緒に生きようとしてくれて
ありがとう
もう逃げないよ
封印の呪符は消えていた
きっと、キミがボクの封印された心を助けてくれたから
行こう
外へ
キミと歩き出そう
立ち向かおう
全てを終わらせるために
もう、何も怖くない
キミが世界にいてくれるから