生きていることが 分からない
要らないモノ
ここは人間どもがある目的で作った研究所。
自分は狭い筒状の装置の中、監視されながら生きていた。
生物兵器
まさに自分達はそれだった。
特別な能力を細胞に組み込み、人工的に作られた生き物。
自分は“最初から最終進化系体を生み出す”試験体の一人だった。
他にも同じ目的で作り出された奴らがいたが、皆失敗して死んでいった。
今、この試験体で生きているのは自分だけだ。
他の部屋では違う実験も行われているらしい。
そこでも生き残ったのは僅か三人。自分を含めて生物兵器は四人となった。
他の三人がどんな能力を植え付けられ、どんな奴らなのかは知らない。
しかし、たまにテレパシーか何かで伝わってくる声がある。
恐らくその三人の中の一人であろう。
『いつか必ず 神の裁きを』
そればかりが聞こえてくる。
感情など微塵も感じない冷たい声。狂った思想。
生物兵器である自分達に、感情や心など無駄なものは備え付けられていない。
そんなものは いらなかった
――――――――――――――――――――――――――――――………
――――――――――――――――――――……
ある日、自分の担当者が変わった。
しかしそんなことはどうでもよかった。
変わったと言っても 人間の科学者であることは何も変わらないのだから
「ども!今日からここの担当になりよったシンヤいいます〜!」
聞いたことの無い喋り方をする大柄で髭の生えた中年男だった。
しかしそんなこと自分には関係のないことだ。そう思ってまた目を閉じた。
「へぇ、こいつが噂の…えーと、名前は?」
「試験体011503です」
白衣の科学者がそう言い放った。
所詮自分らはただの兵器。名前など無く、番号で区別されるだけ。
「ぜろいち…なんやそれ、名前とちゃうやんけ」
中年の男は装置の中で眠る自分に近づき、顔を覗き込んだ。
それが鬱陶しくて蒼い瞳でその男を睨んでやった。
「よしっ!今日からこいつの名前は“リクヤ”や!!」
名前…?
男の訳の分からない発言に科学者達も驚いた。
「名前だなんて…そんなもの必要ありません。これはただの兵器です。
そんな名前なんて与えて、これに感情が出来てしまったらどうするのですか」
「兵器やのうてこいつは生き物や。そこんとこ忘れたらあかん。
ええか、今日から全員こいつのことはリクヤと呼べ!」
…何だ、こいつ……
どうして…名前なんか……
「リク…ヤ……」
気がついたら、自分でその名を繰り返していた。
初めて自分の声を聞いた。
「…っ!?011503が喋った…っ!!」
「この八年間…一言も喋らなかったのに…!」
自分でも訳の分からない状態に、どこか違和感を感じた。
なんだ…この変な気分は……
どうして、自然と声が出たのだろう…
わからない
「まっ、これからヨロシクな!リクヤ!!」
自分は…ただその不思議な人間を睨みつけるだけだった。